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遠隔医療相談は「病院の外」で何を実現するか?相談データ解析から見えた役割【メドピアグループ・ 眞鍋歩】|イベントレポート

2018.03.06

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梶川奈津子
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長谷川リョー
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「「遠隔医療」の“今”をつかみ“未来”をつくる <第2弾>」と題されて2017年9月に行われた「MedPeer Healthtech Academy chapter4」(メドピア ヘルステックアカデミー)。

本記事では、眞鍋歩氏(株式会社Mediplat(メドピアグループ)メディカルアシュアランスチーム・チームリーダー/医師)による「遠隔医療相談から見えて来た、遠隔医療がこれからの医療で果たす役割」と題された講演の内容を再構成してお届けします。

眞鍋氏は、医師として医療現場で感じた「予防医療の必要性」を起点に、医療相談プラットフォーム「first call」をスタート。「正しい医療情報を、適切な形で提供する世界観を実現したい」と語ります。“病院中心の医療”の打開を目指す眞鍋氏に「オンライン医療相談プラットフォーム」が果たす役割について、お話しいただきました。

疲弊する医師を救い、患者に最適な医療を。「first call」が持つ3つのコンセプト

メドピアグループの株式会社Mediplatで、オンライン医療相談サービス「first call」の企画に従事しています医師の眞鍋と申します。

オンライン医療相談サービスの企画に従事する眞鍋氏
株式会社Mediplat(メドピアグループ) 眞鍋 歩氏(医師)

「first call」は、チャットとテレビ電話を使って遠隔で医師に直接「医療相談」ができるプラットフォームで、特徴は医師が実名で相談に応じることです。2016年9月から、症例の集積および医師の回答精度の向上を目的としてモニターを募り、相談内容のデータを蓄積してきました。2017年5月からは、月額540円の課金形態で個人向けサービスとして展開し、現在ではモニターと一般の個人ユーザー、法人契約含め、利用者3万5,000名(2017年9月時点)のデータを保有するまでに至っています。

この医療相談データの分析から見えてきたことを、本日はお話したいと思います。

「予防医療の必要性」に関するインフォグラフィック
予防医療の必要性

「first call」の3つのコンセプトを説明させてください。一つは「予防医療の必要性」です。きっかけは、以前私が日大病院に勤務していた際に感じた「医師としての危機感」です。従来の医療では来院した患者を治療することに重点が置かれており、医師が一日中診療を行っています。要職の医師が疲弊していく姿を目の当たりにし、「発症した患者を治療する」のではなく、その前段階から介入して「そもそも病気を発症させない」もしくは「重症化させない医療」に注力する必要があると考えるようになりました。

二つ目は、「医療システムの最適化」です。患者さんが病院で受診する前に「医療相談プラットフォーム」が介入すると、医療業界にとって有用な効果を発揮できます。現状の医療システムのもとでは、緊急性のない軽症患者が病院を受診する「コンビニ受診」や、症状が悪くなってから病院に行くために起こる「受診機会損失による重症化」、途中で通院を止めてしまう「治療離脱」といった問題が発生しています。その前段階に我々のプラットフォームが入ることで、患者が適切な病院受診が可能になったり、もしくは病院受診をしなくても済むような方々の無駄な受診を減らすことができると考えています。

三つ目は、「正しい医療情報を、適切な形で提供する」世界観の実現です。「医療」を「情報」として考えたとき、恐らくほとんどの方は周囲に相談できる医療関係者がいらっしゃらないでしょう。たとえインターネットで自身の健康状態や病状を調べたとしても、その結果が「本当に知りたい情報」でなかったり、「本当に自分に該当する情報」かどうかを判断できなかったりします。一方「first call」では、専門の医師が一対一で相談に回答するので、その方に合った情報を提供することが可能です。「インターネットで検索する」という行動を「『first call』で直接医師に相談する」という行動へ変容させたいのです。

相談データの解析で見えた「予防医療の必要性」

「first call」のサービス開発においては、圧倒的にニーズが高い「チャット相談」を注力的にブラッシュアップしています。今後は、「相談内容のテキストデータ」をAIで解析し、回答精度の向上に役立てていく予定です。

今回は、約2万4,000件の相談データを解析した結果・傾向をご説明します。まず分析対象の相談者の男女比は「4対6」と女性がやや多く、相談者の年齢は「20代~40代中盤」となっています。相談内容の対象は「自分自身」である場合がほとんどですが、一部お子様やご両親の介護の相談など、ご家族に関するご相談がありました。家族など自分以外のことを相談できるのも、医療相談の良いところです。科目別では、「内科」が一番多く、ここに男女差は見られません。

「first call」の相談対象者と科目別構成比のグラフ(N=24605)
「first call」での相談実績における、相談対象者と科目別構成比

また「相談のタイミング」としては、およそ「医療機関の受診前」が8割、「受診後」が2割の比率です。

「first call」において、医療相談全体の内訳
「first call」での相談実績における、相談内容の内訳

ここで、相談内容と医師からの回答内容の特徴について、特にご相談が多かった5つの科目(腰痛、頭痛、肩こり、婦人科系疾患、精神科系疾患)に絞ってご説明します。

「腰痛」「頭痛」「肩こり」は受診前のご相談がほとんどで、最も多いのは「現在の症状、病気の原因が知りたい」、次に「セルフケア、セルフメディケーションの方法が知りたい」という要望が多い傾向にあります。

一方医師の回答としては、要望されたセルフケアの方法を教えるのはもちろんのこと、受診勧奨を行うケースも多くなっています。なぜなら、相談者が考える原因と医学的な見地で見立てる疾患・症状にずれがあるからです。たとえば、一般的によくみられる「頭痛」だとしても、重篤な疾患が隠れている可能性があります。このように受診前の医療相談は、重症化のサインを見つけ出すことができるため、注意すべき疾患の早期発見に繋がる可能性があると考えます。

続いて「婦人科系疾患」「精神科系疾患」は受診後の相談が多く、総じて医療機関なりかかりつけの先生がいる患者さんが、セカンドオピニオンとして「first call」を使用しています。それに対する医師の回答の特徴として、現在の治療についてアドバイスをするだけでなく、病気の原因や症状の原因を詳しく解説したり、受診をためらわれている方に対して受診勧奨をしています。

特に「婦人科系疾患」の相談は、既に医療機関にかかっているにも関わらず、不安を拭えない方が一定数いらっしゃいます。病気への不安を抱えやすい若い年代や未婚の女性を中心に、相談者のご年齢や状況に合わせた適切な情報を提供し、検診や医療機関に対する適切な「受診勧奨」を行うことが、不安軽減につながると考えます。

また「精神科系疾患」は一度発症した場合、症状の改善までに長い期間を要するが傾向にあるので、発症前の段階で病気を捉えることが重要です。「精神疾患を抱えながら働く方は、労働生産性が低下する」というデータも出ており、経営的な観点から早期にアプローチしていくことが必要だと考える企業も増えています。そうした課題感をお持ちの企業様には、「first call」を法人契約で提供しています。

医療の未来を担う民間発のプラットフォームが目指す今後

医療相談「first call」の目指す今後について語る眞鍋氏
医療相談サービスが果たす役割と、新たな医療の在り方について語る眞鍋氏

冒頭でも申し上げましたが、一般の方々の健康に対するすべての不安を医療機関が解決することは不可能です。「病院の外で起きている不安」に我々が介入する必要があります。たとえば通院中の方に対しては、問題の整理や不安の解消をお手伝いしたり、もしくはセカンドオピニオンを提供できます。そうして病院やクリニックで補いきれない役割を我々が補完することで、医療機関が本来の「患者を診る」という業務に集中できる環境を実現できるのではないでしょうか。

医療相談サービスが果たす役割と今後の医療の在り方についてのインフォグラフィック
医療相談サービスが作る今後の医療の在り方

また、私たちが現在推進しているのがデータの利活用です。テキストベースでやりとりを行う「チャット相談」によって得たデータを蓄積し、AIによって分析することで、さまざまな病気の予知・予測・傾向把握が可能になります。具体的をいくつか挙げると、うつ病の発症のリスク予測や、業種や企業別に「病気ごとの発症傾向」などの将来的な予測を行うプログラム開発などが考えられます。予防医療の進展に大きく寄与すると考えています。

テキスト、特にチャットでのやりとりは現代のコミュニケーション手段として一番ハードルが低く、「場所と時間を選ばない」、かつ我々のサービスでは「匿名性を担保できる」という特長もあります。一般の方々に最適なサービスを提供しながら、予防医療の発展に向けた事業を推進していきたいと思っています。

眞鍋 歩Ayumu Manabe

株式会社Mediplat(メドピアグループ)
メディカルアシュアランスチーム チームリーダー(医師・医学博士)

2009年に日本大学医学部卒業後、2011年4月日本大学病院眼科入局。2012年ボストンHarvard大学MEEI病院、2014年シンガポールCamden Medical Centerへ短期留学。2015年3月日本大学医学博士課程修了。2015年12月NGO団体AOCAの活動でインドダラムサラに白内障手術アイキャンプへ参加。現在、日本大学病院眼科研究医員として臨床・研究に従事しながら、オンライン医療相談プラットフォーム「first call」の企画・運営に参画。
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