FUTURE

ヘルステックの未来を切り拓くためのアイデアの種をお届け

ヘルステック・スタートアップの登竜門、「Health 2.0」ピッチコンテスト。会場の視線を奪った、6社の精鋭スタートアップたち

2017年12月5日・6日に渋谷ヒカリエで行われた、世界最大規模かつ最もアクティブなグローバル・カンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2017」。当日のカンファレンスをもっとも賑わせた「ピッチコンテスト」では、日本のヘルスケアの未来を担う先進企業が自社サービスについて熱く語った。

本記事では、2018年12月4日・5日に開催を控え、ピッチコンテストの応募も始まった「Health 2.0 Asia – Japan 2018」を前に、昨年度のピッチコンテストに参加した6社のプレゼンテーションを振り返る。研修医のトレーニングからリハビリ、視覚障害、栄養まで、ヘルスケアの課題に斬新なアイデアや技術を駆使してチャレンジする精鋭たちから、ヘルステック市場の未来を紐解いていく。

2018年度ピッチコンテストの開催概要・応募はこちら

<セッション登壇者>
檜山 康明(株式会社MICOTOテクノロジー 代表取締役社長)
橋本 舜(ベースフード株式会社 代表取締役社長)
島影 圭佑(株式会社 OTON GLASS 代表取締役)
岡部 大地(株式会社ジャパンヘルスケア 代表取締役社長 CEO(医師))
森本 暁彦(株式会社ロボキュア 代表取締役)
Jesper Aggergaard(Gonio VR CEO)

<審査員>
Eugene Borukhovich(Global Head of Digital Health& Innovation, Bayer)
玉塚 元一(株式会社ハーツユナイテッドグループ 代表取締役社長CEO)
Robin Farmanfarmaian(The Patient as CEO 著者)
湯浅 智之(株式会社リヴァンプ 代表取締役社長CEO)
宮田 拓弥(スクラムベンチャーズ 創業者/ジェネラルパートナー)
堀 新一郎(YJキャピタル株式会社 代表取締役)
田中 聡(日本生命保険相互会社 取締役執行役員)
矢作 友一(インテージグループ株式会社アスクレップ 代表取締役社長)
石見 陽(メドピア株式会社 代表取締役社長 CEO(医師・医学博士))
※肩書は登壇当時のもの

日本のヘルスケア市場は、高齢先進国として世界中から注目を集めています。本ピッチコンテストは、世界が注目する日本のヘルスケア市場で、ゆりかごから墓場まで、人の「よりよく生きる」を支える次世代サービスのチャレンジを「Health 2.0 Asia – Japan」がサポートする目的で開催されています。

登壇企業は、国内外70社以上のヘルステックビジネスの中から厳選されたファイナリスト6社。審査員には、各界のトップランナーが招待されました。

医師を育てるロボット「mikoto」で会場の視線を釘付けに。鳥取発ベンチャーが最優秀賞を受賞

MICOTOテクノロジー 代表取締役社長 檜山康明氏
MICOTOテクノロジー 代表取締役社長 檜山康明氏

最優秀賞およびLINK-J賞(スポンサー賞)を同時受賞したのは、株式会社MICOTOテクノロジー。同社は、ロボット開発を主業とする鳥取の企業です。ピッチコンテスト会場に登場した「mikoto」は、見た目から皮膚の感触に至るまで人間そっくりに再現されたロボット。救急搬送された患者などへの措置として行う、気道確保のための経鼻経口気管挿管をシミュレーションすることができます。

檜山氏は「医師を目指す人の多くは、研修医になって初めて患者さんに接することになります。つまり『知識はあるが、実務経験がない医師』が命を預かることになる。そうした課題に着目し、『mikoto』を開発しました」と語りました。

同社創業のきっかけは、鳥取大学医学部付属病院が、新しい医療機器を作ろうとパートナーを探していたこと。もともとレスキューロボットや警備ロボットなどを開発していたテムザックが前身となり、MICOTOテクノロジー(旧社名:テムザック技術研究所)を創業。鳥取大学医学部付属病院と協業し、医療ロボットを開発するに至ったそうです。

「ニッチな市場でオンリーワンな企業を目指している」そうで、まずは日本国内に「mikoto」を普及させることを第一に事業を展開しています。日本のモノづくり技術を生かした日本発の医療ロボットが、世界のシェアを獲得するか。今後の展開に注目が高まります。

同社の詳細は、檜山氏のインタビュー『「Health 2.0」で会場を沸かせた鳥取発ベンチャー。医師を育てるロボット「mikoto」が誕生するまで』をご覧ください。

“完全栄養食”で主食を再定義。次世代の“健康食”をつくるBASE FOODが描く未来

ベースフード株式会社 代表取締役社長 橋本舜氏
ベースフード株式会社 代表取締役社長 橋本舜氏

1度の食事で必要な31種類の栄養を摂取できるパスタ「BASE PASTA」で会場を沸かせたのがベースフード社です。2017年2月に販売開始後、大手メーカーを差し置いてAmazonの食品部門で堂々の売上ランキング1位を獲得するなど、インパクト十分。会場で行われた試食会でも、審査員から「美味しい」という声が続出しました。

CEOの橋本氏はピッチコンテストで、「パスタだけでなくパンやラーメン、ナンなど世界中の主食に栄養バランスを持たせられる“コアの技術”を持っている」と語っています。ピッチコンテストでは受賞こそならなかったものの、未来の食生活を想像させるトークで注目を集めました。

ピッチコンテスト後に行なったインタビューでは、「日清食品さんがカップヌードルで世界をとったように、私たちは“健康的な主食”で、先駆として大きい市場を作りたい」とも語っており、今後の活躍がますます期待されています。

同社の詳細は、橋本氏のインタビュー『「BASE FOOD」起業ストーリーから紐解く―主食の再定義が世界にイノベーションをもたらす理由』をご覧ください。

字が読めない父に贈ったスマートグラス「OTON GLASS」が、視覚障害者の光になった

株式会社 OTON GLASS 代表取締役 島影圭佑氏
株式会社 OTON GLASS 代表取締役 島影圭佑氏

会場からのオーディエンス投票で最多得票数を獲得したのが「OTON GLASS」。メガネが文字を読み込み、読み上げる光景に会場全体がどよめいた。

島影氏は大学3年生から製品デザインの研究室に所属しており、空間やグラフィック、電子工作などさまざまま選択肢があったなか、在学中に登場したiPhoneの衝撃をきっかけに、専攻を工業製品に決定。デザイナーにとって“遊び甲斐”があるというインテリアデザインよりも、社会に革命をもたらす工業製品の開発を志向したそうだ。

同サービスの開発を手がけるきっかけは、島影氏の父親が失読症を発症したこと。インタビューでは「現在はiPS細胞によって、眼そのものをつくってしまう研究もありますが、実現するにはまだ長い道のりがある。『OTON GLASS』は、そういった技術が実現するまでの間、視覚障害で苦しむ人たちの生活を支える存在になれればと思っています」と語っています。

視覚障害に悩む方々の光となる存在として、今後さらに注目を集めることが予想されています。

同社の詳細は、島影氏のインタビュー『iPhoneに触発された大学生が、字が読めない父のためにスマートグラスをつくる。「OTON GLASS」の開発秘話に迫る。』をご覧ください。

「美脚で健康をデザインする」医師起業家・岡部大地が予防医療に人生を懸ける理由

株式会社ジャパンヘルスケア 代表取締役社長 岡部大地氏
株式会社ジャパンヘルスケア 代表取締役社長 岡部大地氏

ヒールを履いて登壇し、会場を大いに賑わせたのが、美脚にフォーカスして予防医療を推進する「スマートヒール」でファイナリストに選ばれた、株式会社ジャパンヘルスケア 代表取締役社長CEO 岡部大地氏です。岡部氏は、現役の医師としても活躍しています。

岡部氏は自身が「酷いO脚だった」という過去に触れながら、トレーニングや毎日の意識がけで「誰でも美脚になれる」と語りました。美脚をつくる歩き方にフォーカスしている理由は、「歩き方が悪いと疲れやすい体になってしまう」から。歩き方を改善することは、自分の体を労わることに直結するのだそうです。

会社の中に健康的な食事を提供する社員食堂があれば、知らないうちに健康になれる。地域に憩いの場があり、ご老人が定期的に集まっていれば、認知症の発症率が下がる。「スマートヒール」は、そうした予防の仕組みの一つ。手軽に美脚になれるサービスなら、健康を意識せずに健康になれると考えたのだそう。

インタビューでは、「予防医療が当たり前の社会をつくることは、(ビジネスと医学の)双方に理解がある僕に課された使命だと思っています」とコメント。「人の為に何かをしたい」という根源的欲求に導かれた異色の起業家に、審査員の熱い視線が注がれていました。

同社の詳細は、岡部氏のインタビュー『美脚を目指せば、健康になれる。予防に人生をかける若手医師が「スマートヒール」を開発する理由』をご覧ください。

“リハビリ不足”に立ち向かうアプリケーション。社会課題の克服に向けた、ロボキュアの挑戦

株式会社ロボキュア代表取締役 森本暁彦氏
株式会社ロボキュア代表取締役 森本暁彦氏

失語症の方々の言語リハビリを支援する事業を展開する株式会社ロボキュアは、共同創業者の石畑恭平氏自身が失語症を患った過去に創業が由来します。

失語症治療は、これまで言語聴覚士による毎日の訓練が必要でした。しかし、慢性的な言語聴覚士不足により、リハビリが不十分な状態での退院を余儀なくされる患者さんが多くみられます。

この課題を解決すべく、ロボキュアは、自宅でもトレーニングができる、「Pepper」を用いた言語障害トレーニングアプリを提供しています(2018年6月に「ハナセル」の名称で、タブレッットでの言語リハビリサービスとして正式リリース)。今後サービスが普及していけば、“リハビリ不足”の現状を打破できる可能性があるそうです。

サービス開発を開始してから実証実験を積み重ねた結果、現在は「しっかりとした訓練ができるようになってきている」そう。「本格的にデータを集めながら改善を繰り返したことで、成果が出はじめている」のだといいます。

うめき声しか出なかった重度の患者が、単語を発言できるようになった事例もあるそうで、リハビリの結果に医師の方も驚かれているそうです。

森本氏は、ピッチコンテスト後のインタビューで「もう回復しないと思っていた、もしかしたら人生を諦めていた人たちが、ちゃんと人生を前向きに歩んでいってくれると嬉しいです」と語られています。“リハビリ不足”という社会課題の克服ができるのか、注目が高まります。

同社の詳細は、森本氏と石畑氏のインタビュー『ロボットの“やさしさ”で言葉を取り戻す。失語症患者を救うリハビリアプリ開発の紆余曲折に迫る』をご覧ください。

VR空間でリハビリを行う、次世代の医療の実現へ。Gonio VRが構想する、患者と理学療法士にとって最高のリハ体験とは?

Gonio VR CEO Jesper Aggergaard氏
Gonio VR CEO Jesper Aggergaard氏

海外から唯一、ファイナリストに選出されたGonio VR。同社は、理学療法VRリハビリツールを開発しています。同社CEOのJesper Aggergaard氏は、ご自身が理学療法士を務めていた経験から、理学療法士と患者さんにとって最高のリハビリ体験を提供するソリューションとして、ゲーミングを選択しました。

Gonio VRが本籍を置く、福祉国家として有名なデンマークでは、今まさに福祉にテクノロジーを導入する機運が高まっているそうです。Jesper氏は、「成功導入例のひとつが弊社であり、100人以上の患者さんのエビデンスを持っている」と語りました。

ヘルスケアバーチャルリアリティの市場は、2025年に53億ドルに上るとの予測もあり、ヘルスケア市場の中でも大きな注目を集めています。日本国内でもVRを用いたヘルスケアが盛んになりつつあることからも、仮想現実でリハビリを行う“未来の体験”が現実味を帯びつつあるように感じられました。


「Health 2.0 Asia – Japan」で見られる光景は、数年後に訪れるかもしれない。昨年カンファレンスに登壇した企業の数々は、今まさにヘルステック市場を席巻しつつあります。

今年の「Health 2.0 Asia – Japan 2018」ピッチコンテストへの応募も始まったばかり。医療・ヘルスケアに知見の深いトップランナーが集う最先端の場で、あなたも挑戦してみませんか?

ピッチコンテストの開催概要・応募は以下のリンクをご覧ください。
Health 2.0 Asia – Japan 2018 ピッチコンテスト専用サイト

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