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DNAを解析すると、何が分かる?自らの身体を「実験台」にしたジャーナリストが語る、「Precision Medicine」への展望

2018年12月4日から5日にかけてメドピア株式会社主催で開催された、世界最大規模かつ最もアクティブなグローバル・カンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2018」。産学官からヘルスケア業界をリードするトップランナーたちが集い、数十にも及ぶセッションが繰り広げられました。

今回は、1日目に行われた講演「Precision Medicine: Radical Wellness: How to Build a Better 」の様子をダイジェストでお送りします。

「Precision Medicine」とは日本語で「高精度医療」といい、遺伝子レベルで身体を解析し、個々人の抱えているリスクを予防する医療分野です。自らの遺伝子をすべて解析した経験を持つジャーナリストのDavid Ewing Duncan氏は、データを知ることで変化する「健康」への意識を語ります。
 ■目次


「Precision Medicine」を推進するための3つのステップ

American journalist, author and broadcaster David Ewing Duncan氏
American journalist, author and broadcaster David Ewing Duncan氏

David Ewing Duncan(以下、David):ジャーナリストのDavid Ewing Duncanと申します。今回、私がお話しするテーマは「Precision Medicine(高精度医療)」。これは、個々人の疾患を遺伝子レベルで分析し、最適化された薬を投与、治療するものです。本日は、私がジャーナリストとして自分自身を実験台にして集めてきたデータや、そこから得た知見を紹介していきます。

私が考える「Precision Medicine」にはいくつかステップがあります。まず最初に重要なのは、データを集めること。人間のDNA構造は20年前に解析されていますが、希少疾患の原因や行動に感するデータも、DNAから集めることが可能になっています。私は2001年に自らの身体を実験台として差し出し、DNA解析を行ってもらいました。世界で2人目の被験者でした。

次なるステップが、AIによる解析です。現在、機械学習の高度な進歩によって、複雑な人間のデータが解析できるようになってきています。大手の製薬企業などがマシーンラーニングに取り組み、医薬品の開発に注力している現状です。

そして、3つ目のステップが「ラディカルウェルネス」です。あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、医療がコミットするポイントを「病気」から「健康」に定め、効率的な予防ができるよう、データを役立てていく必要があります。

心臓の状態から、ストレスマネジメントまで。遺伝子解析で分かること

David:私はこれまで、自分の体を実験台に、さまざまな検査を受けてきました。さまざまな身体解析をしてもらい、心臓、糖尿病リスク、炎症、ストレスマネジメントなどの相関が分かってきました。

医療サービスを開発する企業の多くは、消費者向けの簡便なインターフェースを開発し、ライフスタイル、生活習慣を指導してくれる「コーチ」を生み出してくれることでしょう。そして、私にも現在、コーチの「ジンジャーさん」がいます。月に一度、電話でデータをおさらいし、健康へのアドバイスをしてくれるのです。

私は、日本にも「ジンジャーさん」が必要な人は多いのではないかと思っています。月に1度だけでも、健康に気を使う時間ができれば、世界中の健康増進が促進するのではないでしょうか?

また、近年では採血することで、個々人にあったダイエット方法を提案できることも判明しています。例えば、ビーガンダイエットが向いているのか、肉を食べても大丈夫なのか。既往歴をみなくても、体質に合ったダイエットが分かるようになっているのです。

「ノンフィクション」が現実になる、医療の未来を信じて

David:私は2001年に、自らの遺伝子配列を調べてもらい、本を書いたことがありました。遺伝子データの総量は15テラバイト。11年の間に集めました。テストは1,000以上。DNAのマーカーは25,000と、非常に莫大な数です。15万ドルの費用をかけて、遺伝子配列を調べてもらったのです。

遺伝子を調べてもらった結果、私は心臓発作のリスクが高く、体重が増えることでより可能性が高まることが判明しました。遺伝子を調べてもらうことで、予防に努めることができるようになったのです。

これからの時代、一人ひとりにデータが展開されるようになっていきます。まだまだ分からないことはたくさんありますが、ITの進歩によって理解は深まっていくはずです。医療従事者はITをもっと深く知り、IT開発者は医療従事者のことをより知り、お互いに歩み寄っていくことが求められるのではないでしょうか。他にも、さまざまな産業との連携が必要になっていくことでしょう。

最後に、SFライターのウィリアム・ギブソンの言葉を紹介したいと思います。

未来はもう到来している。ただその分布は地理的にばらつきがある。

ITの進歩によって、ノンフィクションのような未来が訪れることでしょう。私が今度出版する書籍(※)にもロボットのドクターを紹介していますが、どのように実現してくのか、非常に楽しみです。本日はありがとうございました。

※David Ewing Duncan氏による新著はこちら
Talking to Robots: Tales from Our Human-Robot Futures

David Ewing Duncan

American journalist, author and broadcaster

David Ewing Duncanはサイエンス、政治領域において受賞歴のあるジャーナリスト。21の言語で出版された9タイトルにおいてベストセラーを記録する著者でもある。次回著書は「Talking to Robots: Tales from our Human-Robot Futures (Dutton-Penguin, 2019)(原題)」。またDavidはArc FusionでCEO・キュレーターを務めており、今までにはFortune, National Geographic, Discover, Life, Time, Newsweekなど多数のメディアへの掲載歴がある。また、最近ではthe Daily Beastにおいてコラムニスト、その他、Wired, Vanity Fair, MIT Technology Review, The New York Times, Atlanticなど多くのメディアに寄稿している。元NPR's Morning Editionコメンテーター、ABC’s Nightline、20/20の特別編集員・プロデューサーでもあった。UC Berkeleyにおいて生命科学政策センターの設立に携わる。Davidの記事は、AAASのMagazine Story of the Yearなど、多くの賞を受賞しており、National Academies of Sciencesのサイエンス・コミュニケーション領域の委員として活動している。
www.davidewingduncan.com