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若者のライフスタイルに入り込む仕掛けとは?―ホットヨガLAVA、FEELCYCLEなど数々のヒット事業で健康社会に挑むベンチャーバンクグループ

2018.01.19

Text By
オバラミツフミ
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長谷川リョー
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国民皆保険制度をはじめ、保険制度が充実する日本は、病気を事前に防ぐ「予防医療」の考え方が普及しにくい。しかし超高齢社会の進行に伴い、政府が医療費削減を掲げるなど、国民にも意識の変化が求められている。そうした時代変化の中で注目を集めているのが、「美と健康」に特化した事業を展開するベンチャーバンクだ。

同社グループは日本最大級のヨガスタジオ「ホットヨガスタジオLAVA」をはじめ、“暗闇エクササイズ”という新しいカルチャーをつくり出した「FEELCYCLE」、日本初のトランポリンフィットネス「jump one」など、健康をライフスタイルの一部と捉えたユニークなマーケティングを次々と展開する。

同社CEO・佐伯信行氏は「ヘルスケアは広義の予防医療である」と語る。「健康寿命の延伸」を掲げ、若年層に健康投資を意識させるユニークなマーケティング論、企業にトップダウンで健康経営を意識させる新事業構想、アーリーアダプターのインサイトを突く事業開発など、幅広くお話を伺った。

70歳以上の7割が人生に後悔する。ベンチャーバンクが「健康寿命の延伸」に向き合う理由

ーーまずは、ベンチャーバンクが「健康寿命の延伸」を事業ドメインに設定された背景をお伺いしてもよろしいでしょうか?


佐伯信行氏(株式会社ベンチャーバンク 代表取締役社長 兼 CEO)

佐伯信行(以下、佐伯):会長の鷲見が、ホットヨガに出会ったことが大きな転換期となりました。鷲見はもともと陸上を嗜んでおり、ファンクショナルなトレーニングを日常に取り入れていました。その際に友人からホットヨガを紹介され、自宅で試したところ、非常に気持ちがよく今までに感じたことのない爽快感があったそうです。

しかし当時、日本にはホットヨガそのものがありませんでした。それならば自分たちでやろうと、「ホットヨガスタジオLAVA」を立ち上げたことが全ての始まりです。

ヨガについての研究を進めていくと、ヨガが人々にもたらす効果には潜在的ニーズがあると確信しました。哲学、呼吸、瞑想、食、解剖学的見地等々突き詰めれば詰めるほど、人間が生きる上で重要なエッセンスをいくつも内包していることに気がついたのです。

当たり前ですが、人は健康で長生きできることに越したことはありません。ヨガ以外でも人々の健康をサポートする事業を立ち上げていくうちに、「健康寿命の延伸」を軸として事業を運営していくことに決めました。

「健康寿命の延伸」を事業ドメインに据えるにあたり、あるアンケート結果にも注目をしました。70歳を超える方々や、病気で体調を崩してしまった方々の7割以上の方が「もっといろいろなことにチャレンジすればよかった」、「もっといろいろな場所に行けばよかった」、「もっと多くの人に感謝を伝えておけばよかった」と人生に対する後悔を口にしているのです。

人は寿命が長ければ長いほど、「人に感謝する」ことの大切さに気付く機会が増え、「どこかに行こう」という意欲が湧きます。ただ、心と体が健康でなければ、それらを実行することができません。つまり、人生を全うするためには心身ともに健やかであることが不可欠です。そうした背景から、「健康寿命の延伸」につながる事業をBtoCで提供しています。

若年層の承認欲求を刺激し、Macbookを片手にカフェに通うようにフィットネスジムに通ってもらう

ーー事業ごとに異なる、心の健康と体の健康へのアプローチ方法を教えていただけますか?

佐伯:「LAVA」はヨガで得られる柔軟性や体幹・バランス力の強化といった体の側面だけでなく、汗をかいたときの爽快感や、それに伴うリラックス効果、瞑想によって、自分自身を見つめ直す心の健康にもアプローチしています。

一方、トランポリンフィットネス「jump one」は心拍数を高める運動で基礎代謝を上げ、適切なウェイト維持や体の健康をサポートしています。もちろんそれだけでなく、最新ヒットチャートや照明演出で作り出す非日常空間によってとにかく楽しい時間を過ごすことで、ストレス発散ができるという心の健康にもフォーカスしています。10代もしくは20代の若いうちから体を鍛え、筋肉や血管のしなやかさをつくっておかないと、体は老化の一途を辿ってしまうのです。

心と体、どちらの健康にもアプローチすることで、人々が長く健康に生きていけると私たちは考えています。

そうはいっても、ハードなトレーニングを望む人がいれば、緩やかに体を動かしたい人もいます。そうした多種多様なニーズに応えるため、プログラムに強弱をつけながら複数の事業展開を行っています。

ーーサービスを展開する上で、意識されていることはありますか?

佐伯:アーリーアダプターの動きは重視しています。彼らは潜在意識にある感覚で優れたサービスを察知するため、彼らのインサイトを突くことはサービスを流布させるきっかけになると思っています。

また、日本を基準にして情報を取りにいくことはしません。日本は健康後進国で、いかに薬を体に入れないようにするかが大切なのに、予防医療に対する考えが希薄で、病気になってから薬で治療をしようとします。

健康への意識が高いのは基本的に欧米人です。フィットネスが広義の予防医療だと理解しているため、彼らが利用するサービスは、今後日本でも伸びていく可能性があります。

ーー御社のフィットネス事業は、運動の中に音楽を取り入れるなど特徴的なブランドが多いように感じます。10代もしくは20代の若年層に訴求するポイントとして、意識されていることはありますか?

佐伯:「ライフスタイルデザイン」につながるかどうかを意識しています。ボディメイクやヨガが一過性のものではなく、生涯を通してその人の人生に寄り添い、必要不可欠なものにしたいのです。

たとえば、Mac Book Airを購入してオシャレなカフェで仕事をすることで、一時的な欲求を満たせるとしましょう。しかし、同じような人が出てくると、今度はよりデザイン化されたPCが欲しくなる。色で差別化したり、新型に買い換えたりして、人と少しだけ差別化された自分をブランディングしようとするのです。

私たちの事業も、そうしたライフスタイルを構成する一つの要素であろうと心がけています。たとえばjump oneは、暗闇の中で他人の目を気にすることなく、それでいながらたくさんの人たちと一緒に運動できる楽しみがあります。ただジムに通うのではなく、よりオシャレな方法で運動に取り組める環境になっているのです。言い換えると「エッジの効いたjump oneというフィットネスで、誰の視線も気にせずに一心不乱に五感で感じる空間を楽しんでいる自分」が好きになる。そんな自分だけのライフスタイルデザインをしているのです。

佐伯:承認欲求を刺激し、生活の中に健康につながる取り組みをインサートすることで、誰もが健康を意識せずとも健康になれるような仕組みづくりを心がけています。

トップダウンで健康意識を改革する、ベンチャーバンク流“健康経営”

ーー日本は国民皆保険制度があるため、そもそも健康に投資する意識が育ちにくいと思います。健康をライフスタイルの一環に取り込むのは難しいのではないでしょうか?

佐伯:これまではきっかけを与えるに過ぎなかったため、難しさがありました。たとえばアプリが「あなたの健康状態はよくない」と伝えたところで、本人が自発的に行動を起こす可能性は低いのです。具体的なソリューションや未来の自分をイメージしにくいからです。

また国策として健康経営や働き方改革を打ち出すなど、人事制度を改革して個人の健康にアプローチする施策がありますが、アプリと同様に個人の行動を変えるにはなかなか至りません。企業が健康経営に乗り出したところで、ソリューションを持っていない以上、自社の人事制度で社員の健康をまかなうことは困難なのです。

社員に「運動をしなければ寿命が短くなる」と伝えたところで、退勤後にそのままフィットネスに通う人はそう多くないでしょう。

佐伯:そこで弊社は、今年から、人事制度や単なる福利厚生サービスではなし得ない「真の健康経営」を支援する事業を立ち上げます。弊社は健康に関する事業を20年以上開発、運営し続けており、健康にまつわるノウハウとソリューションを数多く保有しています。

例えば、経営者の方々の健康に対する意識を、セミナーや体験、日常的に提供される健康にまつわる情報を取り入れるライフスタイルへと改革した上で、従業員の健康管理にコミットしていただきます。日中に短い睡眠をとって疲れを癒すパワーナップや、実際にジムに行って体を動かすなど、就業時間内で定常的に健康を意識した活動を取り入れていただくこともあります。その上で全社員が月に複数回、弊社の提供するソリューションを自発的に利用していただく仕組みを提供します。

ーー御社も、自社内で健康経営を目指した取り組みをされる予定ですか?

佐伯:現在は社割を活用し、社員のフィットネスジム利用を活性化させています。また、来年度にはオフィスを改装します。1日に30分以上座っていると死期が早まるといったデータもあるため、立ちながら仕事ができるワークスペースを設けたり、業務内容によって適した椅子の座面設定等様々なコンテンツを取り入れる検討をしています。

ーー最後に、ベンチャーバンクの展望についてお伺いさせてください。

佐伯:これまではBtoCでサービスを提供してきましたが、これから本腰を入れてBtoBtoC領域に参入します。日本は現在、国策として医療費削減を掲げ、健康経営を打ち出している。ようやく「健康に投資する」という土壌ができつつあります。

既に数社のご協力を得て、テストマーケティングも完了しました。身体とメンタルの各数値に相応の改善効果を確認できたことで、みなさまの健康寿命の延伸に寄与できると確信しています。

佐伯 信行Nobuyuki Saeki

株式会社ベンチャーバンク
代表取締役社長 兼 CEO

大学卒業後電気事業の営業から、31歳で東証一部上場の流通・小売企業へ転身。その後取締役として複合商業施設プロデュース・運営管理を行い、M&A先にて専務執行役員として事業再生や新規事業開発を経験後、ジャスダック上場企業の人事部長に転じる。採用や人事制度設計等 組織開発、事業部長を歴任し、ベンチャーバンクへは2014年に入社。執行役員を経て2016年に代表取締役社長に就任、株式会社ソーエキサイトの代表取締役社長も兼任。
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