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IoT、ビッグデータ、AIが引き起こす「第四次産業革命」とは?【ABEJA代表・岡田陽介氏】|イベントレポート

2017.06.05 9:30

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長谷川リョー

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IoT RHS2 ディープラーニング ビッグデータ 人工知能(AI)
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「AI×医療の”今”をつかみ”未来”をつくる」をテーマに2016年9月に行われた「Realtime Healthtech Seminar vol.2」。本記事では、岡田陽介氏(株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO兼CTO)による「第四次産業革命をリードする“IoT、ビッグデータ、人工知能”の可能性」と題された講演の内容を再構成してお届けします。

日本ではじめてディープラーニングを専門的に扱うベンチャー企業として創業したABEJA。IoT、ビッグデータ、AIという現在もっとも注目を浴びる技術を単体ではなく、三位一体として関係性で理解することで、そこから第四次産業革命が立ち上がろうとしているのがうかがえます。その技術基盤となる「ABEJA PLATFORM」を提供する岡田陽介氏がその全体像を語ります。

IoT、ビッグデータ、AIを活用した産業構造変革を目指すABEJA

ABEJAは医療ベンチャーというわけではなく、広くディープラーニングを活用した技術でビジネスを支援するプラットフォームを提供しています。今回はIoT、ビッグデータ、人工知能が三位一体となることで、変貌するビジネスの展望についてお話させていただきます。

ABEJAは日本で初めてディープラーニングを専門的に扱うベンチャー企業として、2012年に創業しました。事業内容としては、「IoT、ビッグデータ、AIを活用した産業構造変革」と大きく標榜しています。つまりこうした最先端技術をエンターテインメントではなく、ビジネスに活かしていくことで、イノベーションに結び付けていこうと考えているのです。そして、その先に見えるのが「第四次産業革命」に他なりません。


(本記事内のスライド資料の権利はすべて株式会社ABEJAに帰属)

産業革命史とは、第一次の蒸気機関から始まり、電気エネルギー、コンピュータと続いてきました。そして現在の「IoT、ビッグデータ、AI」が第四次に該当すると言われています。産業革命の特徴は、そのものがなくなった瞬間に全産業が停止してしまうというところではないかと思っています。たとえば今、コンピュータが止まってしまったら、あらゆる産業が機能不全に陥ってしまうでしょう。それと同様にことが今後のAIにも言えるのではないかと思っています。以下では、なぜIoT、ビッグデータ、AIがそうした第四次産業革命を引き起こすのかを、それぞれの関係性を辿りながら説明していきます。

三位一体で理解するIoT、ビッグデータ、AI

まずはじめは新聞などでも取りあげられることの多い「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」から。我々は大きく「上りのIoT」と「下りのIoT」と二つに分けています。センサーが安価になったことにより、あらゆる場所にセンサーが点在するようになりました。これによってセンサーからクラウド上にデータを吸い上げる環境ができつつあります。これが我々の考える「上りのIoT」です。

一方で「下りのIoT」とは何でしょうか。たとえば家に帰る5分前に勝手にお風呂を沸かせたり、勝手にエアコンが付く。インターネットからわれわれのリアルの世界に信号を送るのが「下りのIoT」です。世界中にあるあらゆるモノがクラウド、AIとつながる基盤が固まってきたのが直近の動向だと思われます。

その背景には指数関数的に上昇している通信速度と帯域の発展があることは言うまでもありません。5Gになれば無線接続がより高速になるため、ほぼリアルタイムでクラウドにデータを送ることのできる環境が整いつつあると言えます。2013年には世界中に4.4ZB(ゼタバイト)あると言われていたデータ量が、2020年には約10倍の44ZBに膨れ上がると言われています。

こうしてビッグデータが生まれるわけですが、これをクラウドに上げるだけでもこれまでは莫大なコストがかかっていました。ところが現在はAWS、Azureをはじめ様々なクラウドシステムが提供されています。これらのストレージ価格をみてみると、1GBを一ヶ月預けるのにかかる費用は約0.03ドルほどです。ここまでコストが低下すれば、どんどんビッグデータを貯蓄することが可能になっていきます。しかもそのデータがリアルタイムでかつ細かい単位で溜まっていき、様々な非構造化データも集積します。

そうなると、上記の図のようにIoTデータはどんどん溜まりながら、既存のデータともつながっていきます。この既存のデータとの連携にAPIが活発に活用されるようになっています。APIを活用することでIoTデータと既存のデータをシームレスに扱うことができるようになり、それがビッグデータを進化させる理由になっています。

従来の機械学習とディープラーニングの違い

大量にデータが溜まったあとに問題になるのは、そのデータをいかに利活用するかということです。そこで登場するのが「人工知能(AI)」。ここで機械学習とディープラーニングの何が違うのかを、私なりに少し噛み砕いて説明させてください。犬と猫を判別するために、一つ一つ特徴量を抽出し、分類するのが「機械学習」。ただし、部分的に判断が微妙になるケースも出てきます。そこに対して、「もしこうだったらこちらを優先する」といった重み付けをし、ルールを設けなければいけないのがこれまでの機械学習でした。従来までの機械学習は例外処理に対応ができなかったため、判定ミスも少なからず起きていたのです。

そこで出てきたのが「ディープラーニング」という手法になります。ディープラーニングと一口にいっても、上記のように「Deep Convolutional Neural Network」、「Deep Recurrent Neural Network」…というふうに分類がいくつかあります。なかでも一番早期に成果を挙げているのが、「Deep Convolutional Neural Network」です。これを使って先ほどの犬と猫を判別する問題に対してアプローチをすると、基本的には人間が特徴を入れる必要がなくなります。

なぜこうしたことが可能になったかというと、GPU(Graphics Processing Unit)の利用により学習時間が飛躍的に向上したからといえます。皆さんのコンピュータに積まれているCPUの場合、例えば、あるビックデータをもとに学習させるのに144時間かかるとします。それに対して、GPUでは同様の学習が、約10時間で学習することが可能になるのです。しかもこれを分散させることで、現実的な学習の時間とコストの範囲で行えるようになります。

そうなると先ほどの図で説明した大量のIoTデータに対して、AIがどんどん解析を行い、自動化を促したり、オートメーションのプロセスを作っていく仕組みができていくのです。では、そのなかで我々はどういったことをやっているのか。その説明をこれからしていこうと思います。

顧客が求めるのは技術そのものではない

われわれは第四次産業革命に必要なキー技術とそこに紐づくビジネスモデルを提供する企業になりたいと思っています。その基幹技術になるのが「ABEJA PLATFORM」という技術です。先ほどの図に当てはめると、以下のような見取り図になります。

基本的にはビッグデータを扱う基盤を保有し、プラスでビックデータを解析する人工知能技術を持っています。加えて、既存のシステムとつなぐようなAPIの接続性(connectivity)も担保していますし、IoTデータをシームレスにリアルタイムでクラウドに上げる仕組みもすべて我々のプラットフォーム側で提供しています。これが一番のアドバンテージポイントになっており、最近ではこの仕組みを「さくらのIoTプラットフォーム」や「SORACOM」とも連携しました。

ただ、ここでもっとも本質的な課題として意識しなくてはならないことがあります。それはお客様は必ずしもIoT、ビッグデータ、人工知能を欲しているわけではないということです。どうすればビジネスを成長させたり、便利にすることができるのかを求めている。ですので、我々としてはプラットフォームを単に販売することよりも、プラットフォーム上で何ができるのかを明確化しご提示することがあくまでも重要な焦点になると考えています。

具体的な我々の仕組みを説明する前に、用語の整理をしておきます。IT業界で一般的に使われる用語にSaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)の3つがあります。IaaSはAWSやAzureのようなサーバー群のこと。PaaSはGoogle、Amazon、Salesforce、SAPといった企業が提供しているような共通基盤。ここは日本が一社も取れていない、我々が一番の課題と思っている領域です。その上にいわゆるSaaSというものが乗っており、これは皆さんがよく使うウェブサービス。ざっくりとこうした3層構造になっているのですが、我々としてはこのPaaSを取りに行きたいと思っています。

基本的にはインプットデータと呼ばれるIoTのセンサーやERP、CRMなどのデータウェアハウスのデータを流していただきます。これはリアルタイムで流しても問題ないですし、一発で大量のデータ量を流しても、何百GB(ギガバイト)であっても、何TB(テラバイト)であっても、確実に耐えられるような設計になっています。そこからデータをすべて集め、データベース内で自動分類されるようになっています。これらのデータをディープラーニングの学習に活用することもできますし、任意のデータとして扱い、実行(推論)することもできます。今度な分散処理をすることができるようになっているので、一万台のコンピュータをたとえば一時間だけ借りるといったことも可能です。

ここが一つのミソになっており、分散処理はひたすら横に並列していけばうまくいくかというと、それでは全然うまくいきません。データが円滑に送られてこないからです。数百台、数千台規模に分散をさせても、それを可能にする仕組みを構築する必要があります。ここはGoogleやFacebookがうまくやっているところですが、我々もこの点をすでに克服していて、何百万台でもどんどん並列分散させることができる技術基盤を構築しました。これがIoT、ビッグデータ、人工知能という新しい技術を本番環境(実際にサービス可能なレベル)でビジネス化するためキーポイントだと考えています。

そのため我々の仕組みはロボットに入れていただくこともありますし、既存のsalesforceさんのような他のプラットフォームと連携いただくこともありますし、高いフレキシビリティを持って提供させていただいております。

あらゆる産業がつながり、新たなビジネスが立ち上がる

すでにPaaSをベースにあらゆる産業に我々の技術を適用させていただいています。リテールやロジスティックス、あとは製造業。現在は産業ごとに縦割りで提供していますが、今後は様々な産業界のデータを横断でクラウドに溜めていく流れができていくはずです。そうなると、産業の領域を超えてつながるビジネスモデルも立ち上がっていくでしょう。そこにおいてもわれわれの仕組みが100%対応できる基盤技術なっています。

たとえばリテール(小売)において在庫情報を自動で製造業のパートナーに送ったり、輸送情報と自動運転車を連動させることもできます。他にも人の流れを学習することにより街の構築に活かしたり、電車やバスといったトランスポーテーションやエネルギーの最適化もできる。あとは医療やホームIoTなど、すべてのものに繋がっていくと考えています。

最後に繰り返しになりますが、お客さんが欲しているのはIoT、ビッグデータ、AIといった技術ではありません。お客さんが一番求めているのはビジネスを成長させること。そのためにわれわれは「ABEJA PLATFORM」という仕組みを創っておりますので、ぜひ皆さんに活用いただきたいと考えています。日本発のサービスで世界のPaaSになりたいという気持ちで、ビジネスを進めています。これこそがイノベーションで世界を変えることだと信じています。

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岡田 陽介Yousuke Okada

株式会社ABEJA
代表取締役社長CEO兼CTO

1988年生まれ。愛知県名古屋市出身。10歳からプログラミングをスタート。高校で、コンピュータグラフィックスを専攻し、文部科学大臣賞を受賞。大学では、3次元コンピュータグラフィックス関連の研究を複数の国際会議で発表。2011年、株式会社響取締役CTO就任。サービス開発など技術全般を担当。東京のベンチャー企業に入社し、6ヶ月で最年少事業本部マネージャー昇格。四半期で数億円の事業開発を担当。その後、シリコンバレーに滞在し、最先端コンピュータサイエンスをリサーチ。人工知能(特に、ディープラーニング)の革命的進化を目の当たりにする。帰国後、日本で初めてディープラーニングを専門的に取り扱うベンチャー企業である株式会社ABEJAを起業。2014年には「TEDxNagoyaU」で登壇する。