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“品の良さ”だけでは足りない。ヘルスケア業界でビジネスを成功させるために必要な視点

「ヘルステック業界で14年間ビジネスをしていますが、未だに『夜明け』は来ていないという実感を持ち続けています」ーーメドピア代表・石見陽の課題感から生まれた、ヘルスケア業界においてネットワークを構築できる場を提供し、チャレンジする人の背中を押すイベント「Healthcare Daybreak」。

本記事では現RIZAPグループ・夢展望の創業者であり、日本スタートアップ支援協会代表理事をはじめとしたベンチャー支援に力を注ぐ岡隆宏氏をお招きした講演会の模様をダイジェストでお届けします。

大学在学中にレンタルレコード店からビジネスを展開し、現在は日本のスタートアップを支援するメンターに。30年以上にわたって経営に携わってきた岡氏は「アカデミックとエコノミックの両立が経営の鍵だ」と語ります。ヘルステック業界でのビジネス創出を目指す人材に向け、“ビジネスの鉄則”が余すところなく話されました。
 ■目次

  
  

「存続するビジネス以外には手を出すな」上場経験者が語る“ビジネスの鉄則”

夢展望株式会社  取締役会長、日本スタートアップ支援協会 代表理事 岡隆宏氏
夢展望株式会社 取締役会長、日本スタートアップ支援協会 代表理事 岡隆宏氏

岡隆宏(以下、岡):日本スタートアップ支援協会の代表理事の岡と申します。立ち上げた会社が上場した後、日本スタートアップ支援協会を立ち上げました。その名の通りスタートアップを支援する協会で、会員様の中にはメディカル領域で事業を起こされている方もいらっしゃいます。

本日は医療に関する仕事に従事されている人が多く参加されているとお伺いしました。これからビジネスを立ち上げる方もいらっしゃると思うので、そうしたことも意識しながらお話をさせていただければと思っています。

大学在学時に起業したエピソードについて語る岡氏

:僕が初めて起業したのは関西学院大学在学中、大学3年次のときです。TSUTAYAと同じビジネスモデルで、ほぼ同時期にレンタルレコード事業を立ち上げました。TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブの創業者である増田宗昭さんと競争する形になったのですが、うまくいかず、結果的にビジネスをピボットしながら現在に至ります。

レンタルレコードの次に展開したのが、ファミコンレンタルです。レンタルレコードの管理システムを応用することができたので、『ドラゴンクエスト』などの人気ソフトを大量に仕入れ、1泊2日で1,000円程度で貸し出したところ、飛ぶようにレンタルされました。1ヶ月で初期費用を回収できたほどです。

ただ、本当はゲームカセットは「レンタル禁止」だったのです。それを知らずに事業展開してしまっていて、即座に撤退しました。そこで大量に残ってしまったカセットを中古販売したところ、これまた売れたのです。そこで自宅に眠っているカセットを買い取り、再び販売する中古売買を始めました。今でいう「シェアリングエコノミー」のはしりだったのではないかと思います。

結局その中古売買も「擬似レンタル」に該当するとのことで撤退してしまったのですが…。その後もたくさんの事業を展開してきましたが、基本的には過去の事業で培ったノウハウやアセットを駆使しています。

過去の経験から、会員の皆様には、「なくなる可能性のあるビジネスはするな」とアドバイスをしています。僕らは儲かっていた事業が突然なくなることを何度も経験していますので、そのリスクを必ず考えるように指導をしているのです。

選択と集中による“一点突破”で上場へ。「腹をくくった」過去にみる、成功の条件

OEMビジネスの経験について語る岡氏

:中古販売から撤退した後、残っていた資金でどのような事業を展開しようか考えていたところ、KONAMIからご連絡をいただきました。『たまごっち』のような「液晶玩具を製作したい」とのことで、OEMで受託製作を行ったのです。このビジネスが、過去で一番利益を上げています。OEMビジネスは、在庫を持たなくても良いですし、自社で広告を打つ必要もありません。上場するのは難しいですが、BtoBの受託事業は儲けを得るには最適です。

そうした紆余曲折を経て、コスメとダイエットで事業を展開する企業さんと協業し、新たにビジネスを立ち上げました。商品を僕がプロデュースする形です。電話がパンクするくらいに注文が殺到し、こちらも大きな利益を上げました。

ただ、ここでもまたトラブルが発生します。薬事法が強化され、商品の効果や効能の表現が制限されてしまったのです。売上が激減し、腹をくくりました。キャッシュフローが破綻しかけたのです。

そこで考えたのが、「ビジネスの横展開」です。販売していたダイエットコスメは楽天市場でトップクラスの人気でした。お客様がおよそ10万人ほどいたのです。そこで、お客様の属性を調べ上げ、彼らに刺さる事業を展開しようと考えました。

通販サイト「夢展望」事業を立ち上げたきっかけについて語る岡氏

:10万人のお客様のうち、99%は若い女性。なので、若い女性が好む靴とグルメとオークション、そしてブランド品の販売をすることに決めました。それぞれ小さく始め、その中で最も反応が良い事業にリソースを投下する計画です。

最も反応が良かったのは「靴」でした。「靴をネット上で販売する」という発想がそもそもなかったので、市場に競合という競合もほとんどいなかったですが、一気に商品を投入したところ、あれよあれよと言う間にスケールしました。この経験から、「選択と集中を行い、一点突破する重要性」を知りました。起業家の皆様にもよく伝えていることです。

そこから調子に乗ってしまいまして(笑)、販路拡大を目指して海外にも拠点を作ったのですが、そこで長らく赤字経営を続けてしまい、合計17億円のデットファイナンスを行いました。すると、もう上場しなくてはいけません。

今がまさにそうですが、将来的に海外でECサイトが流行ると予測していたものの、赤字事業を切らないことには上場は難しい。泣く泣く撤退し、2013年に上場しています。

上場した目的は、「優秀な人材と資金調達、そして信用力の創造」です。また、上場の絶対条件は、「チームの情熱と覚悟」。また、内部の管理体制を整えることや、優秀な財務責任者を採用することも重要になります。

よく言われることですが、「富士山から見える景色は、富士山に登ってみなければ分からない」。ヘルスケア業界で事業を起こす皆さんにも、IPOの興奮を味わっていただきたいと思っています。

論語と算盤を両立させよ。ヘルスケア業界でビジネスを展開するために大事なこと

石見氏の質問に答える岡氏

石見陽(以下、石見):岡さん、貴重なお話をありがとうございました。私自身、ヘルスケア業界で起業している一人として、「チャレンジの足りなさ」を感じています。そうした課題を解決するためには、本イベント「Healthcare Daybreak」や、弊社が主催する「Health 2.0 Asia – Japan」もそうですが、リアルな場で“横のつながり”を得て、先輩方に学ぶ機会が増えることが重要だと感じています。

私から一点質問したいのですが、これまでの事業も、基本的には全てが連続しているように感じました。ピボットする際には、メンバーに対してどのような説明をされたのでしょうか。

:観察調査をしてからピボットしています。ニーズを事前に把握し、持っているアセットを活用すれば、やるべきことが見えてくるからです。その際には社員の意見を取り入れているので、メンバーがそれほど離れることもありませんでした。

ちなみに石見さんは、創業から上場するまで何年かかりましたか?

石見:10年間です。上場経験のあるメンターに出会ってからは事業が加速しましたが、それまでは大変でした。

:そうですよね。僕は結局、上場経験のあるメンターに出会えないままに上場したので、日本スタートアップ支援協会を設立しています。そうしたエコシステムが、まだまだ日本にないからです。

また過去の経験から、大成功する人とそうでない人の違いは、「運」でしかないと思っています。「同じ失敗はしない」といったことは大前提で、あとは運に任せる以外ないのです。

加えて、先ほどもお話ししたように「選択と集中」が大事です。その際には、固定概念を取っ払ってください。「靴のEC販売をやる」と決めたときは、社員を含め、多くの人の反対がありました。

しかし、プロトタイプをつくって試したところ、成功する確信が持てました。僕は“KKD”と呼んでいるのですが、「経験・勘・度胸」だけでは成功しません。数値の目標を設定し、PDCAが回るかを試す。裏付けをもち、リソースを投下する必要があります。

石見:最後になりますが、ヘルスケア業界で経営を14年続け、良くも悪くも「品の良さ」を感じています。理念を立てやすい業界なのですが、商売人としてのマインドから離れてしまうことがあると思っているんです。

企業として目指すことは素晴らしくても、ビジネスとしてはイマイチなことがよくあります。後世を育てるにあたり、素晴らしい理念を持ちつつ、ビジネスを健全に行う方法をお伺いできますか?

ヘルスケア業界でビジネスを健全に行うコツについて語る岡氏

:まず前提として、ビジョンとミッションがないと、人を統率することはできません。なので、有事の際に立ち返るための指針は持ってください。ただ、経営理念や行動指針は、時代や会社のステージによって変わるものです。

その上で、アカデミックとエコノミックの双方を考えながら、会社を成長させることが大事だと思います。会社が成長しなければ、優秀な人材を採用することもできないので。つまり、上場を目指すことは一つのいい指針になるのではないでしょうか。はっきりとしたゴールを設定することが、重要になると思います。

岡 隆宏Takahiro Oka

夢展望株式会社 取締役会長、日本スタートアップ支援協会 代表理事

1998年に夢展望株式会社を創業し、ライセンス事業、玩具製造業、コスメダイエット事業、ネットオークション事業など数多くの事業開発と事業転換を経験したのち、2005年女性ファッションのネット通販事業を開始し、2013年には東証マザーズへの上場を果たす。その後2015年ライザップグループと資本業務提携をしてグループ入りをする。2016年7月一般社団法人日本スタートアップ支援協会を設立し、現役経営者として起業家の支援に取り組んでいる。日本ベンチャー学会法人会員、経済産業省近畿経済産業局女性起業家サポーター、SMBCと日本総合研究所が企画・運営している「未来2018」のアドバイザリーなど様々な方面でベンチャー支援に携わる。
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