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創業42年、スギ薬局が変わる。協業で挑む「トータルヘルスケア戦略」とは

2018年12月4日から5日にかけてメドピア株式会社主催で開催された、世界最大規模かつ最もアクティブなグローバル・カンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2018」。産学官からヘルスケア業界をリードするトップランナーたちが集い、数十にも及ぶセッションが繰り広げられました。

本記事では、株式会社スギ薬局の代表取締役社長である杉浦克典氏による講演の様子をお届けします。

創業42年を迎えるスギ薬局は、患者が個々に抱えるニーズに応えるため、データを活用した「トータルヘルスケア戦略」を策定。リアル店舗での顧客接点を活かし、サービス提供価値の最大化を図っています。同社代表の杉浦氏が、リアル店舗と人材を活かした「他職種連携」の構想を語りました。
 ■目次


店舗販売から在宅医療まで。「医療」への挑戦を続けた42年

株式会社スギ薬局 代表取締役社長 杉浦克典氏
株式会社スギ薬局 代表取締役社長 杉浦克典氏

杉浦克典氏(以下、杉浦):株式会社スギ薬局、代表取締役社長の杉浦克典と申します。今回は「ドラッグストアによる新たなヘルスケア産業の創出」をテーマに、弊社の取り組みと今後の展望をお話しさせていただきます。

スギ薬局は、2018年で創業42年。これまで、「出店し、お客様との接点を増やすこと」が地域社会への貢献だと捉え、1,150を超える店舗を関東、中部、関西を中心に展開してまいりました。

しかしこれからは、単なる出店だけではない、より広範囲での地域貢献を目指さなければなりません。少子高齢化、地域医療の進行や医療費の高騰といった医療課題を前に、リアル店舗のネットワークと、そこに集まるデータを活かしながら、お客様一人ひとりにパーソナライズ化されたヘルスケアプログラムを提供していかなければいけないと考えています。

株式会社スギ薬局 代表取締役社長 杉浦克典氏

杉浦:展望を語る前にまず、これまでのスギ薬局の取り組みをお話させていただきます。私たちは創業以来、調剤併設型のドラッグストアにこだわり、医療やヘルスケアを強みとして事業を展開してきました。2008年には、地域の在宅医療を担うスギメディカルを創設。治験事業に挑戦したこともありました。

なかでも、私たちが強みとしているのは「人材」です。スギ薬局には管理栄養士が350名、薬剤師が2,600名、看護師が75名と、さまざまな領域の専門家が多く所属しています。

まずは管理栄養士。弊社の管理栄養士の仕事は、単に店頭販売をすることではありません。お客様の相談に乗り、場合によっては血圧や体組成などの身体状態を数値で測定し、最適な商品を紹介するのが仕事です。現在、30店舗に測定機器を置き、お客様の健康状態と向き合った販売形態を目指しています。

そして、薬剤師。仕事は調剤が中心ですが、弊社では看護師と一緒に患者さんのお宅を訪ね、訪問調剤も行なっています。2018年9月末時点で、調剤を実施している803店舗の内、425店舗で訪問調剤を行っており、月に約1万名の患者さん宅を想いをもって訪ねています。現在、処方箋調剤は900億円に近い売上を計上し、来期には1,000億の大台が見えるのではないかと予測しています。

最後に、看護師。弊社では75名の看護師が、9つの事業拠点で活動しています。主な活動は訪問看護。今後は20~30店舗に1店舗、訪問看護の拠点を配置していきたいと思っています。

店舗拡大ではリーチできない。新たな地域貢献のポイントは「協業」

株式会社スギ薬局 代表取締役社長 杉浦克典氏

杉浦:続いて、ここまでご紹介してきたリアル拠点や人材を通じ、どのような未来を実現していきたいのかお話しさせていただきます。

少子高齢化が進む日本において、どのような医療サービスがめられるのか。①医療データを利活用し、個人に最適化されたセルフケアサービス、②医療機関では対応しきれない、疾病・重症化予防サービス、③場所を問わず質の高い医療を受けることができるオンライン医療、④地域医療連携・多職種連携による質の高い医療提供、⑤介護保険サービスに加え、保険外サービス(生活支援)–––この5つが必要だと、弊社では仮説を立てました。

これらを実現するには、自前で店舗数を増やすだけでなく、「協業」を通じて人々と多くの接点を持つことが重要です。予防、未病、検診、診断、治療、慢性期管理、介護、終末期…。さまざまなフェーズにいる人びとへの支援を、単独ではなく、多様なソリューションをもった企業と一緒に推進していきたいと考えています。

協業を進めていくうえで、価値を持ってくるのが「データ」です。これからの時代には、分散されていた患者さんのデータが、一箇所に統合されてくるでしょう。そうした未来を見据えながら、データを活用し、患者さん一人ひとりに最適化されたプログラムを提供することを目指しています。我々も5,000億円ほどの企業規模になってきたので、商品調達力や行政への影響力もある程度ついてきています。そうした我々と組んで、データを共有しながらセルフケアサービスを一緒に作っていきませんか、というお話を、1年ほど前から様々な企業や自治体の皆さまとさせていただいています。

その中で出会ったのがメドピアさんで、2018年3月に業務資本提携を発表しました。これまでリアル店舗を中心にずっとリアル・アナログでやってきた我々と、12万人の医師会員基盤とサービス、医師やITの知見をもつメドピアが組んで、共同事業をいくつか展開しようとしています。実際に協業を進めるなかで、従来の弊社では想像できなかったスピード感で進捗しているプロジェクトが多く、手応えを感じています。

予防から治療まで、スギ薬局の目指す「トータルヘルスケア戦略」

株式会社スギ薬局 代表取締役社長 杉浦克典氏

杉浦:こうした協業を通じて、スギ薬局ではヘルスケアの3つのフェーズにアプローチしていきたいと考えています。

1つ目は、予防。スギ薬局ではお客様の来店頻度は、月に1~2回が平均です。もっと予防にアプローチしてくために、デジタルを介してお客様との接点の場を増やし、行動変容を促していくことにしました。セルフケアの領域においては、やはり運動・食事・睡眠が鍵になります。その中でまずは運動・食事からやっていこうと、メドピアさんとの協業で歩数記録アプリの「スギサポwalk」、食事記録アプリの「スギサポeats」、ミールデリバリーサービス「スギサポdeli」をリリースしています。セルフケア支援においては、個人向けだけでなく、法人向けに健康経営サービスも提供していこうとしています。

アプローチしたいことの2つ目が、医療服薬領域。患者さん一人ひとりの病気のフェーズに合わせ、的確な支援をしていきたいです。例えば糖尿病には第1期から第5期までステージがありますが、重症化しないように、弊社の専門家を用いてプログラムを提供していきたいと考えています。

医療服薬領域で取り組んでいきたいことの一つが、オンライン医療です。この領域は法規制によって動きが左右されやすいのですが、医療を必要とする人びとに届けるために、推進していかなければならないと思っています。弊社は薬局として、オンラインの服薬指導と電子処方箋の送信を行っていきたいですね。

3つ目のフェーズとして、取り組んでいきたいのが介護と生活支援です。これから高齢者が増えてくるなかで、病院にかかる患者さんの数は増えていくことが予想されます。医療費を抑えなければいけない現状、これからは病院が支援を一手に担うのではなく、地域全体で患者さんをケアする「地域包括ケアシステム」の実装が求められます。スギ薬局は、リアル拠点の強みを活かし、多職種連携を通じて地域全体でのヘルスケア支援を行っていきます。

株式会社スギ薬局 代表取締役社長 杉浦克典氏

杉浦:今回、弊社が目指す「トータルヘルスケア戦略」について紹介させていただきました。私たちにはすべての問題を解決する技術はありませんが、リアル拠点のネットワークと優秀な専門家がいます。これらを用い、どのようなデータの活用ができるのか。どのようなヘルスケアが可能か。志を共にできる企業と、さまざまなチャレンジをしていきたいと思っています。

杉浦 克典Katsunori Sugiura

スギホールディングス株式会社 代表取締役副社長
株式会社スギ薬局 代表取締役社長
スギメディカル株式会社 代表取締役副社長
スギスマイル株式会社 代表取締役社長

2001年岐阜薬科大学薬学部 卒業。海外留学、米国ジョンソン・エンド・ジョンソンを経て、2006年スギ薬局入社。店長、内部統制室長、常務取締役営業本部長を従事し2017年より現職。自らの経験で培ったビジネスの視点を経営戦略に置き換え、『薬局』のみならず、お客様・患者様の身近な存在『かかりつけドラッグストア』として実店舗とICT構想をかけ合わせ、“病院完結型”から“地域完結型”への医療の変化に対応している。