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キャップスクリニック総院長・白岡亮平氏が語る「エンタメ×医療」の可能性(前編)

2017.06.21 9:36

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長谷川リョー

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小児科
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小児医療を中心とした勤務医として大学病院で従事したのち、2012年に「キャップスこどもクリニック西葛西」を開院させた白岡亮平先生。その後、北葛西(2013年)、代官山、亀有(2014年)、紀尾井町(2016年)とクリニックを多拠点展開させてきた。なかでも「キャップスクリニック代官山T-SITE」は『セサミストリート』と手を組み、エンターテインメントを医療に取り入れる試みのモデルクリニックとしてスタート。2014年には医療だけではなく運動や食のあらゆる側面から健康を促進するため、教育とIT技術重点を置いた「メディカルフィットネスラボラトリー株式会社」を設立した。小児科医、産業医、そして起業家、あらゆる立場から医療業界の革新に挑む白岡先生に話を伺った。

※白岡先生は2017年7月15日(土)にメドピアが開催するイベント「予防医療×テクノロジーの”今”をつかみ”未来”をつくる(MedPeer Healthtech Academy chapter3 )」に登壇する。

親戚に医療従事者はいなかった。それでも医師になろうと思ったきっかけ

ーーまずは先生ご自身についてお伺いしたいと思います。ご出身は新潟ですか?

白岡 生まれは新潟なのですが、3歳のときに東京に移り、その後は埼玉で育ちました。埼玉の国立の小中に通い、それから慶應高校に入学。高校を経て、慶應大医学部に進学しました。

ーーご家系も医療関係なんでしょうか?

白岡 いや、それが全くいません。医師も看護師も薬剤師もいない。全く医療とは関係ない家系なんです。ただ、父はたまたま医薬品関連の本の編集者をしていました。なので多少医療系の話を聞くことはありましたが、親戚に実際の医療従事者はいませんでしたね。

ーーどうして医師に興味を持たれたのでしょう?

白岡 病気で困っている人の姿をテレビなどのメディアを通じて目にしたことがきっかけかもしれません。「(そうした人たちに対して)自分にできることは何か?」ということは小さい頃から思っていました。小児科医を目指そうと思ったのも、自分と同い年くらいの子供が白血病と闘っていた姿に衝撃を受けたからです。それが小学生の頃ですね。

ーーでは、かなり早い段階から医師を目指されていた?

白岡 選択肢の一つとしては思っていました。他にも芸術系のことに関心があったんです。ピアノを習っていたり、絵を描くのが好きだったり。ただ、教えてくれていた先生が「あなたが医者になった方がいいんじゃないか」と言ってくれました。

ーー正式に決意されたのは高校時代ですか?

白岡 そうですね。慶應高校に入学しましたので、医学部への推薦枠を見越して、3年間はしっかり勉強しました。

ーーその時点で小児科医になることを決めていたんでしょうか?

白岡 はい。私は教育実習生もたくさん来るような、教育学部附属の小中学校で過ごしたんです。そのとき、先生方が子供に教える姿を客観的に見る環境がありました。このとき、子供たちと接する先生たちの姿が目指したい人物像になったのかもしれません。

ーー実際に医師になられてから、現在に至るまでの過程をお聞かせいただけますか?

白岡 2004年に卒業したのですが、その年はちょうど初期臨床研修の初年度。自分が育った環境の近くでもあるさいたま市立病院で2年間研修医として働きました。そのときに色々な科を回ったのですが、改めて小児科が面白いと思ったんです。そして2年後に慶応義塾大学病院の小児科の医局に入り、7〜8年勤務しました。

「医療にテクノロジーを加え、医療環境を変える」ために開業を決意

ーーどういった経緯で開業に至ったのでしょうか?

白岡 勤めていた大学病院の教授に、「自分でクリニックを持ちたい。医療にテクノロジーを加え、医療環境を変えていきたい」という話をしました。医師としての経験を積むなかで、解決しなければいけない課題は見えていたからです。教授には、「そんなことできるか分からないよ」と心配もされましたが、健康にはくれぐれも気を付けるようにと温かい言葉をもらいました。そこから自分なりに経営を勉強したり、事業計画を立てたり、市場調査を行いながら、2〜3年の準備期間を経て開業しました。

ーー勤務医時代は具体的にどういった課題感を持たれていたのでしょうか?

白岡 救急医療もずっとやっていたので、一番課題に思ったのは、普通のクリニックがやっていない深夜の時間に親御さんが子供を連れて受診されるケースがとても多かったことです。病気や身体のことが分からず、不安になって受診される方が多いのですが、実際には軽症であったというケースはかなり多い。これでは病院が回らなくなってしまうため、解決しなければならないと思っていました。

ーーたとえばどういったケースが多いのでしょうか?

白岡 38〜39度の熱が出て、連れてこられる方が多いですね。本人は元気なんだけど、親は心配。もちろんお父さんお母さんの気持ちは非常に分かるのですが、あらかじめ熱が出たときの対処法を教えてあげれば、深夜に病院に来る必要はなかったのではないかというケースが多かったです。

ーー親御さんが子供の症状を心配して、深夜に病院に連れてくるといったことは最近の現象なのでしょうか?

白岡 ここ20〜30年で増えてきたのではないでしょうか。背景には核家族化によって、相談できる相手が少なくなっていたり、一人っ子が多くなったことで、自分の子供を大事に育てなければいけないプレッシャーが増しているのかもしれません。なにかマニュアル通りに育っていなかったり、イレギュラーなことが起こった際に、不安になってしまうお母さんは多いです。

ーーおばあちゃんのような家族の中ですぐに相談できる相手がいれば済んでいたケースもあったかもしれないですね。でも、なぜそこでクリニックの開業だったのでしょうか?

白岡 こうした状況を改善するためには、患者さんやご家族の医療リテラシーを向上させる必要がありますが、私がいた大学病院というのはあくまでも重症の方が来る場所であり、軽症の方はクリニックを受診するのが普通です。なので、クリニックでのプライマリ・ケア機能を充実させ、新しいテクノロジーやサービスを複合的に加えながら、より良い医療環境をつくりたいと考えました。

365日年中無休、多拠点展開する「キャップスクリニック」

ーーそうして開業されたのが「キャップスクリニック」ですね。

白岡 2012年に西葛西でスタートしました。個人病院として始まったのですが、それから三ヶ月後には医療法人化し、2013年に北葛西、2014年に代官山と亀有で開院。去年の10月に紀尾井町にも出したので、現在は5つのクリニックを運営しています。


(キャップスクリニック代官山T-SITE)

ーー今後もクリニックは増やされていくのでしょうか?

白岡 そうですね。はじめから多拠点運営を考えていました。その理由として、医療情報は個人に返されるべきものだと思うからです。つまり初診とは別のクリニックに行くと、また一から無駄な検査や無駄な重複処方が生じてしまいます。もし医療情報がしっかりと共有できていれば、前回行った検査をやる必要はありませんし、診断内容の経過をいちいち聞く必要もない。そうした世界を作りたいと思ったんです。ただ、医療機関同士の連携は容易には行きません。そこでまずは自分たちで多拠点運営を行って連携していこうと思いました。そのため、電子カルテも自分たちで作っています。

ーー電子カルテで何か工夫されているポイントはありますか?

白岡 情報はすべてクラウド化しています。五つのクリニックのうち、どこにかかっていても自分のものであれば過去のカルテをどこからでも見ることができます。もう一つの特徴として、365日年中無休でやっているため、情報の引き継ぎシステムは工夫して作っていますね。

ーークリニックを365日年中無休にされたのは、やはり冒頭でお話されていたような夜間の救急への課題感からでしょうか?

白岡 それももちろんありますが、まずは医療の側が患者さんに近づくべきだと思ったんです。「医療機関がそこまでやってくれている」と思っていただければ、患者さんの心も開いて、話が伝わりやすくなるのではないかと思いました。

ーーただ、実際に365日開くとなると体制作りも大変そうです。そのあたり、何か工夫さえていることはありますか?

白岡 組織がしっかりしていないと、365日体制は維持できません。そのため、「マネジメント」をすごく重視をしています。スタッフ同士のコミュニケーションのためのITツールを使ったり、人事の評価制度によってモチベーションをしっかりと維持することに気を遣っています。医療機関だとなかなかそこまで踏み出せていないのですが、実は医師の評価まで行っています。

ーー普通のクリニックではそこまでやらないですよね?

白岡 普通のクリニックの場合、一人の院長先生がやっていることが大半です。その場合、その先生が全部決めて回っていると思います。でもうちは多拠点でそれができないため、システム化していくことが求められます。ただ、一般企業であればMBO(目標管理)を普通にやっていると思いますので、医療機関ではありますが、私たちも取り入れています。

※白岡先生も登壇!7月15日開催「MedPeer Healthtech Academy chapter3」申込受付中


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白岡 亮平Ryohei Shiraoka

医療法人社団ナイズ 理事長
キャップスクリニック 総院長

慶應義塾大学医学部卒業。さいたま市立病院、慶應義塾大学病院などに勤務し、小児医療を中心に地域医療に従事。2012年4月、365日年中無休のキャップスこどもクリニック西葛西を開院。同年7月に医療法人社団ナイズを設立。北葛西、代官山、亀有、紀尾井町にも開院し、医療法人社団ナイズ理事長、5つのクリニックの総院長を務める。2014年12月、メディカルフィットネスラボラトリー株式会社設立。