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【第6回】ヘルスケアとブロックチェーンの最前線(前編)

2017.09.21 16:30

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淺野 正太郎

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Health 2.0 ブロックチェーン 海外
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2017年12月5-6日に開催予定の「Health 2.0 Asia – Japan 2017」。日本開催第3回目となる今年は「Platform Arises」と題して国内外の先進事例を多数取り上げます。本連載は、当日の参加者ならびにヘルステックに関心を寄せる方々に向けて、「米国市場から学ぶヘルステックの“今”と“未来”」と題した連載を毎週お届けします(連載一覧はこちら)。

昨今、経済ニュースでビットコインが取り上げられる機会が増えてきました。米国ではビットコインに使われているブロックチェーンという技術が多様な業界に転用可能ではないかと注目を集めています。ヘルスケア領域でもブロックチェーンを活用した様々な取り組みが登場しています。

筆者がサンフランシスコに赴任していた2014年-2015年当時、ベンチャー投資担当として「ヘルステック」ともう一つ「ビットコイン」を日々追いかけていました。その2つの領域がこれほど早く重なってきていることに驚いています。今回はその「ヘルスケア×ブロックチェーン」の最新動向についてお伝えします。

インターネット以来の発明とも言われるブロックチェーン

ブロックチェーンとは、端的に言うと「非集権的に処理される分散型ネットワーク」ですが、この説明だけで理解できる人は少ないでしょう。色々と調べても短時間では理解しがたい技術です。ここでは技術的な仕様や構造には言及せず、ブロックチェーンの大まかな概念と、これにより何が可能になるかについて説明します。

インターネットとの比較だと理解がしやすいかと思います。インターネットは情報伝達のツールとしてはこの上なく便利です。例えば、メールで添付ファイルを送ることができるようになり、物理的な紙の郵送が必要なくなりました。これは「コピー」を共有することで情報伝達しているとも言えます。

しかし、「コピー」が不用意に生まれては困るものも多く存在します。「秘匿性の高い情報」です。例えば「資産」「個人の健康情報」などが含まれます。これらは今まで何らかの機関によって管理されてきました。その分、取引・更新・保管でコストが発生します。

この「コピー」が不用意に生まれず「二重利用がおきない」情報の伝達方法がブロックチェーンです。イメージとしては、トランザクション履歴の一定のまとまりがブロックとなり、それが鎖のように繋がって理論上「改ざん不可能」な記録台帳を形成しています。下記のTEDの動画で非常にわかりやすく説明されていますので参照下さい。

※参考動画:TED「ブロックチェーンはいかにお金と経済を変えるか」

日本でビットコイン・ブロックチェーンの専業スタートアップといえば、テレビCMでもおなじみのbitFlyerを筆頭に、Coincheck、Orb、BTCBOX、bitbankなどのFintech企業が数多く挙げられます。米国では既に百花繚乱と言える状態で、Fintech以外にも数多くのブロックチェーン企業が登場しており、金融以外にも30の産業領域に変革をもたらすと言われています(参考記事)。

ヘルステックとしてのブロックチェーンの活用可能性

医療・ヘルスケア領域においても当然、活用可能性の模索が始まっています。今年6月に米国の調査会社であるFrost & Sullivan社が、「ヘルスケア領域でのブロックチェーン活用は2000億ドルの費用削減効果がある」とのプレスリリースを発表しました。その中でスタートアップがカテゴリーごとにまとめられていますが、現在この図が最も網羅性の高いマップです。


(出典:Blockchain Technology in Global Healthcare, 2017-2025(Frost & Sullivan)

もっとも期待されているのは「個人の医療データ保護と相互運用性」と言ってよいでしょう。今年3月のWIREDの記事にこのあたりの詳細動向がまとまっています。

※参考記事:「ブロックチェーンは、複雑な「医療データの管理」も変えうる」(WIRED)

先に述べたブロックチェーンの特性から、電子カルテ情報として記録される種々の情報(診断用の画像、検査結果、処方情報など)もブロック化して時系列に鎖のように格納され、文字通りブロックチェーン化することが想像できます。この情報の中に、誰がいつ個人データにアクセスしたかというタイムスタンプも加えておけば閲覧履歴管理ができ、より精度の高い改ざん防止ツールにもなるでしょう。こうして情報共有の安全性と利便性を両立しうるという点に、投資家だけでなく行政の期待も集まっています。

2017年3月には、早くも米国行政がブロックチェーンをお題としたハッカソンを主催したことが話題となりました。

本件は国家医療IT調整室(The Office of the National Coordinator for Health Information Technology、以下ONC)が主催しました。それ以前にも、2016年9月にResearch Challenge(研究コンテスト)という形でONCと米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology、以下NIST)の共催で15案件に賞金を提供しています。ONCが出した募集動画はこちらからご覧下さい。

また、より詳細のブロックチェーン活用方法や利活用における課題などをお知りになりたい方は、一般社団法人 日本クラウドセキュリティアライアンスの笹原英司氏が公開している以下のスライドにまとまっていますので是非ご覧下さい。

※参考資料:「医療分野のブロックチェーン利活用」(一般社団法人 日本クラウドセキュリティアライアンス 笹原英司氏)

「ヘルスケア×ブロックチェーン」案件の探し方

ヘルスケア領域におけるブロックチェーンスタートアップへの投資額・投資件数はまだ黎明期であり、多くありません。製品開発中もしくは実証実験中のフェーズにあり、まだ「他技術では実現できないことがブロックチェーンによってブレイクスルーするか」は立証しきれていません。引き続き注目分野であることは間違いありませんので、今後の動向を予測する上で、やはり投資家の動きをウォッチしておきたいところです。

米国ではブロックチェーンを専門テーマとしたVC、アクセラレータが存在します。以下の4社は筆者が参考にしている投資家です。彼らの投資先ポートフォリオ一覧を確認していくのがトレンド把握の方法としてお薦めです。

Boost VC

Digital Currency Group

Blockchain Capital

Fenbushi Capital

次回は、「ブロックチェーンとヘルスケアの最前線(後編)」として、米国スタートアップの個別事例をお伝えしていきます。

***本連載の過去記事***

【新連載】米国市場に学ぶヘルステックの“今”と“未来”
【第2回】米国「遠隔診療」の今から日本は何を学ぶか
【第3回】“メンタル疾患大国”米国でのメンタルヘルス・スタートアップの今
【第4回】米国で増加する「治療アプリ」
【第5回】米国ヘルステック興隆の環境要因と展望

***イベント告知***


詳細・お申込みはこちら<早期割引第2弾は10月29日〆>

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淺野 正太郎Shotaro Asano

Health 2.0 Asia - Japan 2017 マネージャー
日本医療機器開発機構 事業開発ディレクター

一橋大学法学部卒業。リクルートホールディングスにて国内の営業/企画職を経て2012年より海外投資部門に従事。Recruit Strategic PartnerのUS拠点立ち上げ、及びNoom・Fitmob・eWeLL・メドケアといったヘルステックベンチャー投資を担当。現在は日本医療機器開発機構にて医療機器/ヘルステック事業開発に携わる。