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【第8回】Amazon Echo、Google Home、「音声アシスタント×AI」は医療の何を変えるか?

2017.10.05 10:00

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淺野 正太郎

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Health 2.0 海外 音声アシスタント
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2017年12月5-6日に開催予定の「Health 2.0 Asia – Japan 2017」。日本開催第3回目となる今年は「Platform Arises」と題して国内外の先進事例を多数取り上げます。本連載は、当日の参加者ならびにヘルステックに関心を寄せる方々に向けて、「米国市場から学ぶヘルステックの“今”と“未来”」と題した連載を毎週お届けします(連載一覧はこちら)。

医療においても「人工知能(以下、AI)」は注目領域として話題であり、画像解析を中心に様々な取り組みがスタートしているのは周知の通りです。今週ちょうど「Amazon Echo」の発売が発表されましたが(参考記事)、今回は、医療・ヘルスケアにおける「音声アシスタント」の最新動向についてお伝えします。

音声アシスタントによって検索行為は“無意識・無目的”になる

音声アシスタントが登場してきている背景には、人々がインターネットから情報取得する手段、インターネット的に言えばUser InterfaceとUser Experience (以下、UI/UX)、の変遷があります。キーワードは、「IoT」と「デバイスに合わせた情報検索の変化」です。

来たるIoT時代にはすべての家電はもちろん、衣類、家具、家の内装に至るまでありとあらゆる身の回りの物体にセンサーが埋め込まれ、スマート化されることが考えられます。それらの機器のコントロール方法として「音声」が非常に相性良いと言われています。

今からちょうど10年前の2007年にiPhoneが登場しましたが、当時は情報検索と言えば、PCを開いて検索サイトに「キーボードで文字入力をする」ことが唯一の手段でした。しかし、iPhoneが登場し、その5年後の2012年頃にはスマホも進化・普及したことで、PCを開かずとも、(望ましくありませんが)歩きスマホをしながらでも、情報検索ができるシーンが生まれました。

それと同時に、スマホに対応した情報インプット方法としてキーボードだけでなく「タップする」というUI/UXが一般的になりました。多数のアプリが生まれ、いかに情報インプットのストレスを軽減して「少ないタップ回数」で情報入力ができるかというUI/UXが磨かれていきました。

昨今ではこれに加えて、「AI」の実用化による新しい情報検索の手段が生まれてきています。それは「チャットボット」です。誰か人間とLINEでやりとりしているかのようなチャット形式での情報検索の手法が登場してきました。これは、ユーザーがどのように情報検索をすれば良いかわかっていない、もしくは迷っているときのナビゲーションの方法として有効です。

その先に期待されているのが「音声アシスタント」です。チャットボットは基本的にはテキスト入力の必要ですが、音声アシスタントは人間同士の自然なやりとりに近い「声による情報検索」です。Apple社がいちはやくSiriをリリースしていることは周知のとおりです。最初は音声認識の精度が良いとは言えず、おもちゃのように感じられたこれらの機能ですが、昨今では精度も上がっており、当初から見据えていた次のUI/UXとしての期待が高まってきました。

これらの潮流は、既に2016年の「KPCB Internet Trend Report」というシリコンバレーの著名な年次レポートの111ページ以降で指摘されています。


(出典:KPCB Internet Trend Report|114ページ)

また、同様の文脈から、Google創業者は約1年半前に以下の趣旨でのブログを投稿しました。

・将来的に次の大きなステップはデバイスという概念が消えていくということ
・いずれコンピュータ自身は(それがどのような形態だろうと)日々私たちを支援するインテリジェントアシスタントになっていく
・Googleはモバイルファーストの世界からAIファーストの世界へ移る

この理想形は、まさに映画「Iron Man(アイアンマン)」に出てくるJarvisのような、万能コンシェルジュとしてのAIアシスタントです。入力するデバイスを意識することなく、いつでも近くにAIが情報検索や機器のコントロールをサポートしてくれる世界観です。

このような世界では、情報検索の仕方が「意識的で目的が明確な検索」から「無意識なつぶやきや、無目的なおしゃべり」からスタートする形に変化します。 飲食店の検索で例えれば、「今日は渋谷駅近くの中華料理に行きたいので、アプリで検索する」行動から、「なんか、お腹すいた。この近くで何か美味しいものない?と声に出す」行動に変わります。利用シーンは、まずは自宅や自家用車の中など、AIに話しかけても恥ずかしくない場所からスタートすると思われます。

日本市場にも次々に登場する「スマートスピーカー」

スマートスピーカー領域は「音声アシスタント」の第一ステップとして、大手企業がこぞって開発競争に乗り出している注目領域です。2017年に入ってからも、Googleが5月に発表した「Google Home」の日本発売やLINEの「WAVE」発表に続き、今週には「Amazon Echo」の発売が報道されました。

音声アシスタントを支える「音声認識」「自然言語処理」技術の精度と速度は日々高まっており、早晩コモディティ化していく中で、「スピーカー」に限らないデバイス、また上記の大手企業に限らない多数のプレイヤーが登場してくるでしょう。

日本ではまだ一般的とまでは言えませんが、米国や中国では音声を使った機器操作は浸透し始めており、前述のレポート(125ページ)では、「2020年にはインターネット検索の50%以上は「画像」と「音声」によるものに置き換わる」とさえ言われています。

スマートスピーカーの比較については、こちらの記事が最近の動向をまとめており、参考になります。
※参考記事:音声アシスタントスピーカーを比較してみる!(iSchool)

Amazon Echoで試した3つの医療「音声アシスタント」サービス

「Amazon Echo」ではいち早く、Skills(スキル)と呼ばれるスマホのアプリに相当するプラットフォームが充実してきていますが、その数は15,000にのぼります(2017年7月時点)。医療領域でもSkillsがMayo Clinic、Healthtap(Dr.AI)、 WebMDからリリースされています。

それぞれのSkills(iTunesでいうところのアプリ)を試してみましたので、その動画とともに所感をお伝えします。動画は筆者の自宅での撮影なのでお聞き苦しいですがご了承下さい。

Mayo Clinic News Network

概要:米国の大手病院Mayo Clinicが作成した、first aid(応急処置)を自己判断しやすくするサービス。
感想:first aid(応急処置)の用途とAmazon Echoが相性良いかどうかはまだ安心感が持てるレベルには達していません。リリースされたばかりなのでUI/UXも発展途上です。
Skillsダウンロード

Dr. A.I. by HealthTap

概要:ToC向けに医療者Q&Aサービスと遠隔診療を提供しているHealthtapによる、「気になった症状」を専門用語が少ない問答で確認でき、出口として自社の遠隔診療に流すモデル。
感想:あえてちょっと無駄な(人間的には自然な)会話の要素を入れており、会話の洗練度は現時点で一番高くスムーズに使えました。今後の医療Skillsのお手本となりそうです。
Skillsダウンロード

WebMD

概要:Amazon Echoの医療系Skillsの最初期(2017年3月)に登場。
感想:こちらはヘルスケア情報におけるウェブ検索をシンプルに音声で置き換えただけですが、慣れれば使いやすいかもしれません。
Skillsダウンロード 

医療分野での「音声アシスタント×AI」の発展可能性

使用してみた感想としては、今の遠隔診療サービスがこういった音声アシスタントサービス起点で利用される、もしくは一部が置き換わっていく可能性を感じます。

いま診療所で手書きで記入している問診票なども、音声アシスタントを使えば自宅で済ませ、その問診データが医療者に見えるような仕組みもできそうです。また利用者自身が自分の健康状態を知りたい場合に、オンラインで検索をかけるよりも手軽に情報取得ができるため、予防医療・未病・セルフメディケーションなどとの概念とも相性の良いツールです。

まだ発言を正しく聞き取ってくれる音声認識の精度(安心度)は人には及びませんが、早々に解決されるでしょうし、今後の日本人の生活に浸透することは確実な技術です。

次回は、「AR/VRとヘルスケア」についてお伝えしていきます。

***本連載の過去記事***

【新連載】米国市場に学ぶヘルステックの“今”と“未来”
【第2回】米国「遠隔診療」の今から日本は何を学ぶか
【第3回】“メンタル疾患大国”米国でのメンタルヘルス・スタートアップの今
【第4回】米国で増加する「治療アプリ」
【第5回】米国ヘルステック興隆の環境要因と展望
【第6回】ヘルスケアとブロックチェーンの最前線(前編)
【第7回】ヘルスケアとブロックチェーンの最前線(後編)

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淺野 正太郎Shotaro Asano

Health 2.0 Asia - Japan 2017 マネージャー
日本医療機器開発機構 事業開発ディレクター

一橋大学法学部卒業。リクルートホールディングスにて国内の営業/企画職を経て2012年より海外投資部門に従事。Recruit Strategic PartnerのUS拠点立ち上げ、及びNoom・Fitmob・eWeLL・メドケアといったヘルステックベンチャー投資を担当。現在は日本医療機器開発機構にて医療機器/ヘルステック事業開発に携わる。