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「Health 2.0」の夜明け、日本医療の新たな歴史を創るー「Health 2.0 Asia – Japan」オープニングダイアログ

2018.01.11

Text By
オバラミツフミ
Edit By
長谷川リョー
Photos By
松平伊織
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2017年12月5日から6日にかけて渋谷ヒカリエで行われた、世界最大規模かつ最もアクティブなグローバル・カンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2017」。ヘルスケア業界をリードする気鋭の起業家たちが集い、数十にも及ぶセッションが繰り広げられました。

開催に先立ち、「Health 2.0」のチェアマン・Matthew Holt氏と「Health 2.0 Asia - Japan」の立ち上げ人・石見陽(メドピア株式会社 代表取締役社長) が登壇。「Health 2.0」がシリコンバレーで初めて開催された2007年から、現在に至るヘルスケア市場の変化を振り返りました。また最後には、石見から超高齢社会を迎える日本が進むべき「産学官」が連携するヘルスケアの未来について提言がありました。

世界の医療は「SMAC」から「SMACK」へ。ヘルスケアの歴史を振り返る


Co-Chairman, Health 2.0 Matthew Holt氏

Matthew Holt(以下、Matthew):「Health 2.0」のMatthew Holtです。今年で日本開催は第3回目となる「Health 2.0 Asia – Japan」は、過去最大の規模となりました。素晴らしいですね、嬉しい限りです。日本主催者の石見陽先生にお話をいただく前に、私から少しだけ、ヘルスケアにおける世界の動向をお話しさせてください。

私が初めて「Health 2.0」をシリコンバレーで開催した2007年以来、10年の間に大きな変化がありました。アメリカでは、政府が電子カルテの導入を呼びかけ、およそ320億ドルもの大金をヘルスケア領域へと出資しています。全ての病院とはいきませんが、非常に多くの病院が電子カルテを導入し、民間のベンダーが躍進を遂げました。

私たちが普段から利用する情報基盤は変化しつつあります。たとえば、iPhoneやMacBookなどを誰もが手にする時代になっていますよね。こうした変化をソーシャル(Social)、モバイル(Mobile)、ビッグデータを呼び換えたアナリシス(Analysis)、クラウド(Cloud)の頭文字を取って「SMAC」と呼びます。

現在は、医療にも「SMAC」が応用されるようになりました。それに加えて、医療には「寛容さ」が求められると思っています。患者さんにフレンドリーでなければ、適切な医療とは言えないからです。そこで、これからの医療は「SMAC」にKindnessを加味し、「SMACK」であるべきだと考えています。

Matthew:「Health 2.0」が初めて開催された2007年は、患者さん同士オンラインでつながること、そして、医師同士がオンラインでつながる世界がくると予見されていました。

石見先生が運営する「MedPeer」はまさにその典型例。ユーザーが新たなヘルスケアの形を作り出したんです。そして、「SMACK」が医療に応用されたことで、医療の受給者同士がつながるようになりました。テクノロジーの進歩とともに、ヘルスケアの仕組みが大きく変化しているんです。

医療の変化を加速した要因として、「ビッグデータの利用」も挙げられるでしょう。データが増えれば増えるほど、意思決定の正確さが変化しました。医療に向き合うスタンスも、どんな薬剤を選ぶかも、選択の仕方が以前とは全く異なっています。この変化が「Health 2.0」です。

市場に流通するお金をみても、この変化は一目瞭然です。昨年、ベンチャーキャピタリストがヘルスケア関連の企業に投資した金額がおよそ60億ドル。しかし今年は、70〜80億ドルほどの投資がありました。

もちろんアメリカに限った話ではなく、中国やインド、ヨーロッパ諸国でもヘルスケアの隆盛がみられます。「SMACK」に区分されるサービスを医療従事者が利用し、今では医療の受給者も当たり前に個人でヘルスケアをする時代になりました。

世界のヘルスケア事情が急速に変化していくなかで、日本は今、世界的にはヘルスケア後進国とも言われていますよね。実際、どのような状況にあるのでしょうか?

日本の医療をアップデートする「Health 2.0」ーー産学官の連携で、本国独自の医療システムを構築する


メドピア株式会社 代表取締役社長(医師) 石見陽

石見陽(以下、石見):メドピア株式会社の石見です。私からは、日本のヘルスケア市場の動向についてお話しさせていただきます。

皆さんもご存知の通り、日本は急速に高齢化が進行しています。2030年には3人に1人が65歳以上になり、2060年には2人に1人が高齢者になると予測されているほどです。

しかし、ヘルスケア業界にとってはチャンスでもあります。日本のヘルスケアは世界からみると遅れを取っていますが、日本独自の路線で市場を切り開いていけるのではないかと思っています。

日本の医療制度は、世界的にユニークです。国民皆保険制度によりすべての国民が保険制度を享受でき、自由に病院を選択できるフリーアクセスが当たり前になっています。

これらの制度によって国民の健康が守られてきましたが、高齢化の流れを鑑みるに、それらの資金を全て税金で養うのには限界があります。医療費を削減しつつ、現行の制度を維持するために、民間企業の参入を促しているのが現状の日本医療です。

石見:「Health 2.0」が初めて開催された2007年に遡ると、日本の医療領域には遠隔診療のプレーヤーがいません。実現しないと考えられていたからです。ビックデータを活用する民間企業も少なかったと思います。

しかし、私がメドピアを創業した2010年から現在までの間に、医療領域に参入する企業が大幅に増えました。ベンチャーのみならず、大手企業も参入してきています。

こうした流れを見ていると、やはり日本も先進諸国と同様に医療のあり方が変わってくると思うんです。特に国民皆保険制度がある日本は、海外に比べて国民のデータを所得しやすい。ビッグデータビジネスと相性がいいんです。

また、モバイル端末の普及率も非常に高い。つまり、産官学が連携する日本独自のイノベーションを起こせるのではないかと考えています。

石見:今回で第三回となる「Health 2.0 Asia – Japan」は、過去2回と比べて最大の規模となりました。スポンサーも、展示ブースへの参加者も昨年の2倍です。今日が日本医療におけるイノベーションの原点になるかもしれません。2日間のデモ、そして交流を通じ、これからの日本医療のあり方を見つめるきっかけを掴んでいただければと思います。

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