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【第9回】米国で成長を続ける「VR/AR×ヘルスケア」

2017.10.17 15:32

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淺野 正太郎

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AR Health 2.0 VR 海外
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2017年12月5-6日に開催予定の「Health 2.0 Asia – Japan 2017」。日本開催第3回目となる今年は「Platform Arises」と題して国内外の先進事例を多数取り上げます。本連載は、当日の参加者ならびにヘルステックに関心を寄せる方々に向けて、「米国市場から学ぶヘルステックの“今”と“未来”」と題した連載を毎週お届けします(連載一覧はこちら)。

先週、Facebook社の子会社であるOculus社より$199の仮想現実(以下、VR)ヘッドセットが発表されました(参考記事)。今まで5−10万円くらいがの相場だった中で、いよいよ普及が進みそうな価格帯でのVRハードウェア登場に今後ますます期待が高まることは必至です。

今週は米国でのヘルスケア領域の仮想現実、拡張現実(以下、VR/AR)動向をお伝えします。

「ヘルスケア」はゲームに次いでVRコンテンツが多い

VRは視覚・聴覚を独占するため、没入感の極めて高い視聴体験を得ることができるデバイスです。米国の投資トレンドとしては2015年あたりから投資が活発なカテゴリーの一つとして注目を集めてきました。AR(拡張現実:augmented reality)もVRほどではありませんが投資件数は拡大してきました。


(出典:https://www.cbinsights.com/research/ar-vr-funding-trends/

ハードウェア、コンテンツ、開発環境などVR/AR投資は多岐に渡りますが、ヘルスケア・医療の観点ではコンテンツがどれだけ拡充されてくるかに注目したいところです。VR/ARのヘルスケア・医療コンテンツは、開発中の約4割を占めるゲームについで多く、全体の1割弱を占めます(ゲーム以外の6割のうちの15%)。GoldmanSachs社の将来予測では2025年のユースケースの約15%にあたる51億ドルに成長すると見込まれており、VRとヘルスケア・医療の相性が良いことが伺えます。


(出典:https://medium.com/@momochen/virtual-reality-landscape-2016-q1-aa9be1ccd9ef


(出典:https://medium.com/@momochen/virtual-reality-landscape-2016-q1-aa9be1ccd9ef


(出典:http://www.businessinsider.com/google-is-going-all-in-on-content-for-its-daydream-vr-platform-2016-8

VR/ARいずれのプレイヤーマップの中でもヘルスケアはカテゴリー化されています。


(出典:http://www.thevrfund.com/

日本でも「医療×VR」は、医療者が使う情報可視化ツールや認知症などの疾患の疑似体験を中心に様々な取り組みがスタートしています。
※参考:「これが「VR×ヘルスケア」最前線」(日経デジタルヘルス)

今回は日本にはまだない米国のサービスを2社、上記のマップからご紹介します。

注目の米国VR関連スタートアップ2社

Psious」はVRの没入感の高い疑似体験によって精神疾患にアプローチしている事例です。同社はスペインのバルセロナで創業され、米国にも拠点をスタートアップです。認知行動療法をVR上で行うことで不安障害や恐怖症の改善を図ります。

同社ホームページの動画では地下鉄に乗るシチュエーションを追体験するシーンがありますが、この他にも離陸直前の航空機内、高所(高層ビルの屋上)などのシーンがVRとして再現されています。また、これらを視聴している患者の心拍数などに表れる反応をセンサーで感知・記録していく機能も実装しています。

第3回でもご紹介した「Pear Therapeutics」もPTSD改善のVR治療を研究しており、プレイヤーが複数登場してきている分野です。治療効果のエビデンスが出て来る日も近いと思われ、VRは精神疾患の分野での活用がいち早く進む可能性があります。

日本ではまだ精神疾患へのVR適応事例は少なくとも事業化レベルでは登場していません。認知行動療法自体が盛んではないことも影響しているかもしれませんが、優れたコンテンツを作れる日本には、実はこの分野での可能性があるのではないでしょうか。


(出典:https://www.psious.com/

次にARの事例として「Augmedix」をご紹介します。同社はGoogle Glass(Googleが開発したメガネ型のARデバイス)を活用し、医師の電子カルテ記入時間を80%削減することを謳っているサンフランシスコのスタートアップです。創業はGoogle Glassがリリースされる一年前の2012年で、すでに60億円以上を資金調達している企業です。同社ホームページの動画にあるように、医師が電子カルテの画面に向かうことなく、患者との会話に集中できるメリットがあります。

仕組みとしては、このデバイスが記録する動画/ストリーミングを裏でスタッフが文字起こしをして電子カルテに手入力しています。筆者が数年前に聞いた話では、文字起こしはインドの医療者にアウトソーシングしているそうです。ちなみに、もともと米国ではディクテーションという文化があります。録音した音声記録の文字起こし市場が既に存在するので、そのリプレイスとしてGoogle Glassを使えばよいという発想で生まれたプロダクトです。現在の日本では文字起こしをする医療知識をもったスタッフを安価に確保することが困難なため導入は難しそうですが、今後、音声認識AIによる文字起こしの精度が向上すれば解決される問題です。

日本では医療者の過重労働や、まだまだ改善余地の大きい業務フロー見直しという課題があり、ARを院内業務フローの効率化に使うという取り組み自体には検討の価値があります。


(出典:https://www.augmedix.com/

VR/ARは、今後ますます活用範囲がより拡がり、治療や医療者の業務効率向上まで貢献できるような取り組みが今後増える余地が十分にある興味深い領域です。
「Health 2.0 Asia – Japan 2017」でも、1日目の12月5日(火)に「VRはもはや現実である」と題したVRのセッションを設けています。最新サービスのデモと共に、日本の医療ヘルスケアにVRがもたらす未来への可能性を模索する本セッションも注目です。(プログラムや登壇者はこちら

次回は、「ウェアラブルの最新事例」についてお伝えしていきます。

***関連記事***

VRの民主化がもたらす医療革命とは?医師と経営、専門家の視点で捉える「VR×医療」の可能性

***本連載の過去記事***

【新連載】米国市場に学ぶヘルステックの“今”と“未来”
【第2回】米国「遠隔診療」の今から日本は何を学ぶか
【第3回】“メンタル疾患大国”米国でのメンタルヘルス・スタートアップの今
【第4回】米国で増加する「治療アプリ」
【第5回】米国ヘルステック興隆の環境要因と展望
【第6回】ヘルスケアとブロックチェーンの最前線(前編)
【第7回】ヘルスケアとブロックチェーンの最前線(後編)
【第8回】Amazon Echo、Google Home、「音声アシスタント×AI」は医療の何を変えるか?

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淺野 正太郎Shotaro Asano

Health 2.0 Asia - Japan 2017 マネージャー
日本医療機器開発機構 事業開発ディレクター

一橋大学法学部卒業。リクルートホールディングスにて国内の営業/企画職を経て2012年より海外投資部門に従事。Recruit Strategic PartnerのUS拠点立ち上げ、及びNoom・Fitmob・eWeLL・メドケアといったヘルステックベンチャー投資を担当。現在は日本医療機器開発機構にて医療機器/ヘルステック事業開発に携わる。