TREND

今を見つめる

【第10回】米国でヘルスケアウェアラブルは一時の流行で終わったのか?

2017.10.23 17:00

TEXT BY
淺野 正太郎

TAGS

Health 2.0 ウェアラブル 米国
  • シェア
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2017年12月5-6日に開催予定の「Health 2.0 Asia – Japan 2017」。日本開催第3回目となる今年は「Platform Arises」と題して国内外の先進事例を多数取り上げます。本連載は、当日の参加者ならびにヘルステックに関心を寄せる方々に向けて、「米国市場から学ぶヘルステックの“今”と“未来”」と題した連載を毎週お届けします(連載一覧はこちら)。

米国でウェアラブルデバイスを指す「Wearables」という言葉が流行りだしたのは2013年のことでした。発端としては、Google Glassが2013年2月にリリースされ、同年にFitbitがグローバルに販売開始を行い知名度が一気にあがったことも大きかったでしょう。そのFitbitも2015年に上場し、Apple Watchの登場もあってイノベーションは一段落しているのではないかという見方や、ヘルスケアで一時期盛り上がったWearables活用も期待を超えるインパクトを生み出したようには見えないことから、一時期ほどのホットなキーワードではなくなっていると言っても良いでしょう。

しかし実際には投資件数は伸び続けており、デバイスの形だけでなく多様なアプローチが試されています。ヘルスケアの分野でもフィットネストラッカー以上の利用が想定されるプロダクトも数多く出てきています。そこで今回は、米国でのヘルスケア領域のWearables動向をお伝えします。

成長を続けるWearables市場

まずヘルスケア/医療に限らずWearables市場全体としては、四半期ごとの投資件数(折れ線グラフ)ベースでほぼ右肩上がりの成長を見せています。2017年の第2四半期では41件の投資が確認されています。2016年の第1四半期の投資額(棒グラフ)が突出しているのはMagic Leapというステルスモードを続けているAR企業が巨額資金調達を行ったためです。

また投資のステージ別に見てもSeed/AngelやSeries Aの比率は落ちておらず、数多くの挑戦が今なお実行されていることが伺えます。


(出典:https://www.cbinsights.com/research/wearable-startup-funding-jawbone-death/

ヘルスケア/医療におけるWearable領域もプレイヤーが増加

ヘルスケア/医療の観点では、昨年2016年に出たヘルスケアIoTマップに「Wearables」の動向も包含されています。


(出典:https://www.cbinsights.com/research/iot-healthcare-market-map-company-list/

Wearablesとしての主要なカテゴリーは「Clinical-Grade Biometric Sensors(臨床用の生体測定センサー)」「Fitness Wearables(フィットネス)」「Brain Sensors/Neurotechnology(脳センサー/神経テクノロジー)」「Infant Monitoring(幼児モニタリング)」です。これらのカテゴリーは米国のフィットネス市場、メンタルヘルス市場の大きさ、そして乳幼児死亡率の高さ(出生数の0.6%にのぼり、日本の0.3%の倍)を背景にしていると思われます。

シニア向けの見守りという市場も存在するのですが、意外なことにまだ大きく取り上げられるスタートアップが登場していません。

今回は「Clinical-Grade Biometric Sensors(臨床用の生体測定センサー)」「Fitness Wearables(フィットネス)」から1社ずつご紹介します。

注目の米国Wearables関連スタートアップ2社

まず臨床用の生体測定センサー領域からは、「mc10」という厚さ0.3mmの人体センサーを開発しているスタートアップをご紹介します。同プロダクトは薄さを実現しつつ曲げることもできます。シールのように人体に貼れるという「Wearable」という概念を突き詰めたプロダクトです。

内蔵しているのは、加速度センサー、ジャイロセンサー、生体電位センサーです。アクティビティのトラッキングはもちろん、筋電計と心電計としての基本機能も備えています。ですが、筋電計や心電計としての医療機器認可を得ていないため、あくまで臨床の研究者用のデバイスとして販売しています。そのためか通常版で2,500ドルと高額なB2B価格です。

今後センサー製造の価格が下がっていき、医療機器の認可を通せば、使い捨てコンタクトレンズのように毎朝カラダにセンサーを貼るという新たな習慣が生まれる可能性があります。

また同社の株主には医療機器メーカー世界No.1のMedtronic社が名を連ねている点に注目しています。センサー精度向上、生産価格低下、医療機器認定など何らかのマイルストーンを達成した段階で、Medtronic社の傘下に入り、グローバルの販売網で一気に広がる可能性を秘めています。


(出典:https://www.mc10inc.com/

次に、フィットネス分野からは、「Motiv」という指輪型のアクティビティトラッカーを開発しているスタートアップをご紹介します。同プロダクトは防水加工がされた8mm幅のチタン製の指輪の中に心拍計、加速度計を備えています。電池は5日間もつことを保証していますが、これはリングの形に合わせてバッテリーを製造したことで達成しているようです。

先のmc10と同様に、小型化がここまで進むと腕輪側デバイスの煩わしさをクリアし常時装着するということが苦でなくなり、多くのWearablesの課題である利用継続率が上がる可能性があります。現在、米国のみで199ドルにて販売されています。


(出典:https://mymotiv.com/

使用感は、筆者が過去に使用したFitbitと取れるデータは大差なく、一定のユーザーをリプレイスする可能性を感じます。まさに「Wearables」という印象です。ただ、まだアクティビティトラッキングができたことに対するSo What?感は否めず、データ解析やユーザーへの有益なフィードバックなど、さらなる進化を期待したいところです。

このようなデバイスは、アクティビティトラッカーとしての用途の範囲内であれば医療機器には該当せず、すぐにグローバル展開が可能です。生産体制が整えばすぐに日本市場にも参入できます。Wearablesに限ったことではなないかもしれませんが、多機能化の方向よりも単機能でも違和感ないレベルまで小型化する方が新たなユーザー体験を提供できる好例ではないでしょうか。

次回は、「Googleが取り組むヘルスケア」についてお伝えしていきます。

***本連載の過去記事***

【新連載】米国市場に学ぶヘルステックの“今”と“未来”
【第2回】米国「遠隔診療」の今から日本は何を学ぶか
【第3回】“メンタル疾患大国”米国でのメンタルヘルス・スタートアップの今
【第4回】米国で増加する「治療アプリ」
【第5回】米国ヘルステック興隆の環境要因と展望
【第6回】ヘルスケアとブロックチェーンの最前線(前編)
【第7回】ヘルスケアとブロックチェーンの最前線(後編)
【第8回】Amazon Echo、Google Home、「音声アシスタント×AI」は医療の何を変えるか?
【第9回】米国で成長を続ける「VR/AR×ヘルスケア」

***イベント告知***

2017.10.16 ピッチコンテストの出場者募集を開始!

詳細・お申込みはこちら<早期割引第2弾は10月29日〆>
ピッチコンテストの概要・応募はこちら<応募は11月10日〆>

  • シェア
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

淺野 正太郎Shotaro Asano

Health 2.0 Asia - Japan 2017 マネージャー
日本医療機器開発機構 事業開発ディレクター

一橋大学法学部卒業。リクルートホールディングスにて国内の営業/企画職を経て2012年より海外投資部門に従事。Recruit Strategic PartnerのUS拠点立ち上げ、及びNoom・Fitmob・eWeLL・メドケアといったヘルステックベンチャー投資を担当。現在は日本医療機器開発機構にて医療機器/ヘルステック事業開発に携わる。