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【Health 2.0・上田悠理】医療×ITの最先端!HIMSS18に行ってきたーvol.1
2018.03.23
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- 上田悠理
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【Health 2.0・上田悠理】ヘルステックの新しいスタンダードは”Value-Based”┃HIMSS18に行ってきた―vol.3
自己紹介
まずは私の自己紹介・・・。
上田悠理(うえだゆーり)は、メドピアにて、Health 2.0 Asia – Japanの統括ディレクターを務めている現役の医師です。1週間の内2.5日は、臨床現場にて訪問診療医・形成外科医として、高齢者の褥瘡(床ずれ)管理を中心に地域の人々の健康維持に尽力しています。そして2017年より、メドピア主催にて毎年12月に開催している「Health 2.0 Asia – Japan」や、その他関連イベントの統括ディレクターを務めています。
医療現場の需要とテクノロジーが可能とする供給との溝を実体験として感じており、「リアル」(=臨床現場)だけでは解決できない、「テクノロジー」頼りでも完結しない、そんなヘルスケアをより良いものにすべく活動しています。
※ちなみに上田は元バックパッカー、元アイドル、元バーテンダー、現役唎酒師など、様々な側面を持つ、ぶっ飛び系女医とも言われます…。
※昨年、そんな私のことをインタビューしていただきましたのでもしよければこちらを…。
医療×ITで「ネットだけ、リアルだけ」では解決しない問題に挑む──メドピア/医師 上田悠理
なぜ私がHealth 2.0 Asia – Japanに参画したか?
そもそも、大学病院の形成外科医として勤務していた私ですが、テクノロジーやITへの興味は医学部入学以前から持っていました。そのため周囲にはIT系の友人が多く、そのうちの一人から「医者で、IT企業を経営している面白い人がいる」と言ってメドピアの石見社長を紹介されたことがきっかけで、ヘルステックの世界に出会い、「Health 2.0 Asia – Japan」を任せていただくことになりました。
日常診療の中で、医師にとっての最大のテクノロジー革命は電子カルテ。いまだにクリニックレベルでは導入率は30%に留まるものの、ある程度の病床数がある病院では当たり前になってきました。しかし、病院に勤務する医師の大半が、未だに大量の書類仕事に忙殺されています。
「私たちの1分1秒は、患者さんのためにありたい」。それは医師が誰しも思うこと。けれど、現実にはまだ話したそうな患者さんの外来を数分で切り上げ、その倍の時間をかけてカルテを書いている。SiriちゃんやAlexaちゃんが、アラーム設定から今日のおすすめのレストランだって教えてくれる世界で、私たちはぽちぽちパソコンを打ち、ペンを走らせるんです。
医者が医者らしい仕事をできない、そんな世界は変わるべきだと思いました。そして、変わることのできる環境、技術は既にあると感じています。必要なのは入り口と情報。そして、そんな情報が集まり、きっかけがたくさん生まれる場こそが、「Health 2.0 Asia – Japan」なのです。
右も左もわからない中、初めて統括ディレクターとして携わった2017年。周りの皆様のとんでもなく優しい手助けの元、走りきることができました。(一時は辛くて、何人かに滅びの呪文(=バルス)を唱えて毛根の断絶を祈るところまで追い詰められていたこともありました…)
とにかく情報と人を集めて、「ヘルステック」のすべてを詰め込んだ宝石箱にしたかった。そして、運営にはまだ課題は感じたものの、その通りになったと思います。
2018年も、「ここに来ればヘルステックの最先端がわかる・会える」カンファレンスにしていきたいと思っています。
世界最大のヘルスケアITカンファレンス、HIMSSとは
HIMSSは、Healthcare Information and Management Systems Society(ヘルスケア情報管理システム協会)の略で、個人会員70,000人、企業会員630社、非営利組織450団体からなるシカゴに本部を置く非営利組織です。医療の質向上、低コスト化、安全性・有効性の向上などを目的として、グローバルな情報発信、カンファレンス、アドバイザーなど、多面的に事業を展開しています。
中でもAnnual eventであるHIMSSカンファレンスは、ヘルスケアIT関連のベンダー、医療系専門家、医療機関関係者が一堂に会する情報交換・教育の場として、世界最大規模となっています。
今年のHIMSS18は、米国ラスベガスにて開催。Wynn、Venetian、Palazzo3つのコンベンションセンターを貸し切りにして行われました。5日から9日までの5日間、参加総数43,000人以上、出展企業1,400社、公式教育セッション数300以上、関連イベント数百、ネットワーキングパーティーはエンドレス。ヘルスケアに関わる情報・テクノロジーをいかに有効活用するか、そのソリューションやシステムについて、活発な議論が交わされました。
DATA, DATA, DATA!!
次回以降で、いくつかテーマをピックアップしてお伝えしていきますが、今回参加してひしひしと感じたキーワードは「データ」。とにかくデータ、ひたすらデータ。
EHRを始めとしたデジタルデータを、どう使っていくか、どう守るか、そこから何を導き出すか、誰と連携するか。すべての技術・ソリューションが、人間一人一人から抽出したデータに基づくものになっていました。AIやビッグデータといったキーワードをよく聞くようになって数年経ちましたが、より純化した「データ」に関する話題が多かったのが印象的でした。
今後HIMSSに参加したい方へ※行く前にチェックしておきたい注意点
会場が広すぎる。プログラム見逃しに注意!
会場はかなり広く、しかも同時進行するセッションが多いため、聴講したいセッションを逃して涙を呑む場面も多々あります。参加をご検討の方は、先に公式HPもしくは公式アプリなどで、外せないセッションをチェックしておくと良いでしょう。場所によっては移動に20分(道に迷う時間込み)程度かかるため、下手をするとセッションが終わってしまいます。
意外と見落としがちなのは、別料金の周辺イベントの多いこと。会場まで行ってみると、事前登録が必要です、と入場できないこともあったので、自分のチケットの有効範囲をしっかり把握しておくと良いかと思います。
セッションを回るだけで歩き疲れる。休憩中はカジノの誘惑が
また、会場がホテルのカジノと隣接しているため、歩き疲れてご休憩中の紳士もそこここに散見されました。誘惑に負けないようにしましょう。女性はペタンコ靴持参が必須です。(上田はヒールだったので、初日に購入しました)
さて、次回から、私が実際に見聞きして、興味深かったテーマや話題などについて取り上げていきたいと思います。是非、お付き合いくださいませ。
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連載第2回:【Health 2.0・上田悠理】元GoogleCEOが見る医療ビッグデータビジネス、その先は┃HIMSS18に行ってきた―vol.2

上田悠理 Yuuri Ueda
早稲田大学法学部を卒業後、岡山大学医学部に編入し医師免許を取得。形成外科・訪問診療医として、在宅高齢者の褥瘡管理に携わる。臨床を継続する傍ら、2017年4月よりメドピアが主催するHealth 2.0 Asia – Japan統括ディレクターに就任。臨床現場で感じるニーズと、テクノロジーで可能なこととの間に大きな隔たりを感じており、この壁を破壊するべく、ヘルステック領域のカンファレンスHealth 2.0 Asia – Japanの統括を中心に活動している。