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【Health 2.0・上田悠理】元GoogleCEOが見る医療ビッグデータビジネス、その先は┃HIMSS18に行ってきた―vol.2

2018.03.28

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上田悠理
  • b.hatena
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2018年3月5日~9日の4日間、ラスベガスにて、世界最大のヘルスケアITのカンファレンス「HIMSS18」が開催されました。初参戦した私(上田悠理)筆者が、現地で医師として、そしてヘルステックに携わる者として感じたことをお伝えしていきます。

前回はほぼ自己紹介&総論でしたが、今回から内容に触れていきたいと思います。

HIMSS18レポート連載第2回は、医療におけるビッグデータの活用について、これからどんなビジネスが発展していくのか?元GoogleCEO、現Alphabet の技術顧問であるEric Schmidtのセッションを元に、紐解いていきます!

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“Silver Tsunami”が起こすデータ活用の波

「銀の津波」って何でしょう?

カンファレンス中、頻回に聞こえてきたワードの一つです。意味は至ってシンプルで、「爆発的な高齢化」です。銀髪(=白髪)の波が押し寄せる、想像すると絵的に怖いですよね…。Tsunamiという言葉の浸透にもびっくりですが、日本のみならず、世界的にも「高齢化」が危機感を高めるキーワードになってきていることを実感しました。

さて、では“Silver Tsunami”で何が起こるのか。慢性疾患の増加、医療ニーズの増加とリソースの不足…例を挙げるときりがありません。

当然、それに伴い蓄積するデータは多様化、増大を続けています。特に、生体データのみならず、ゲノムや生理情報、ライフログといった一個人のデータの著しい多様化は、それを蓄積して解析する技術の革新と共に、目覚ましい発展を遂げています。

アメリカではこの10年間、患者情報のEHR(Electric Health Record、電子カルテ上の情報)化が進んでいます(なんと、10年前の10倍!)。しかし、その蓄積データの活用についてはまだ始まったばかり。やっとそのビッグデータの解析技術が確立し、データ活用がされ始めたところです。今後は、蓄積されたデータをどう連携・管理していくか、そして解析したデータからどんなソリューションを提供できるかが課題となっていくでしょう。

まとめると、、、

・Silver Tsunamiで、個人の医療データは量と多様性が増す
・データを蓄積・解析する技術が発展する →今ココ
・その管理体制や応用技術が発展する →次ココ

という感じでしょうか。
 
 

Killer Appの登場はすぐそこ

初日のキーノートで、HIMSSの新しいCEO・Hal Wolfと元GoogleCEOで現在はAlphabet(Googleとそのグループ企業の親会社)の技術顧問であるEric Schmidtが、ヘルスケア領域の展望について語りました。(流石Eric、ものすごい数の聴衆でした!!)

元GoogleCEO・Eric Schumidtのセッションを聴こうと集まった人々
元GoogleSEO・Eric Schmidtのセッションを聴こうと集まる人々

膨大に蓄積するデータをいかに有効活用するか。そのために必要なテクノロジーには、例えばEHR共通のデータ蓄積機構や、蓄積した個々人のデータの標準化システム、データセットを縦断する解析技術、機械学習、「次のステップ」を予想し得る技術、音声・言語認識と書き写し技術、などがあります。

しかし、これらのテクノロジーは既に存在するか、数年以内に開発されるだろう、とEricは予想しています。「次の10年いや、それよりも早くに、EHRシステムをただのデータの集まりから、ソリューションを導く“Killer App”(※)へと進化させる技術が出現するだろう。」―そう確信的に語るEricには、経験に裏打ちされたテクノロジーが辿る道が見えているようでした。
※キラーアプリケーション、あるプラットフォームを普及させるほどの魅力を持ったアプリケーションソフトウェア
 
 

The Power of “AND”

今までのサービスは、極論、“ログを取るだけ”のものが多かった。ところが今後は、取ったデータを解析して導き出される情報と、その先にある解決策まで見えるようになってくる。なにやら、やっとビジネスの匂いがしてきた気がします。

例えば、毎日体重を図って、自動的にiPhoneで記録できるサービス。これを使えば毎日の生活と体重が連動してわかるけれど、ここ1週間太っていることがわかっても、明日も私はぶーちゃんなんです。だから記録しても「・・・で?」と思うのが正直なところ。

体重計に乗る人の写真
太ったというライフログを通知してくれたところで何にも解決しない。

これからは、膨大な類似のライフログを解析して導き出された情報から、「私」に最適化されたダイエットのアドバイスが得られる世界になるでしょう。Halの言葉を借りると、テクノロジー“&”データで様々なことが可能になってくる。「&(AND)」の力が今後の発展のカギとなっているのです。
 
 
次回は全体的なセッションのキーワードをいくつか取り上げていこうかな、と思います。しばしお付き合い下さるととても嬉しいです!

上田 悠理 Yuuri Ueda

医師/メドピア株式会社 Health 2.0 Asia – Japan 2017統括ディレクター

早稲田大学法学部を卒業後、岡山大学医学部に編入し医師免許を取得。形成外科・訪問診療医として、在宅高齢者の褥瘡管理に携わる。臨床を継続する傍ら、2017年4月よりメドピアが主催するHealth 2.0 Asia – Japan統括ディレクターに就任。臨床現場で感じるニーズと、テクノロジーで可能なこととの間に大きな隔たりを感じており、この壁を破壊するべく、ヘルステック領域のカンファレンスHealth 2.0 Asia – Japanの統括を中心に活動している。
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