TREND

今を見つめる

HIMSS18 の開催風景

【Health 2.0・上田悠理】今気になる3つのキーワード「CXO」「Population Health」「新しいヒポクラテスの誓い」とは?┃HIMSS18に行ってきた―vol.4

2018.04.20

Text By
上田悠理
  • b.hatena
  • pocket
2018年3月5日~9日の4日間、ラスベガスにて、世界最大のヘルスケアITのカンファレンス「HIMSS18」が開催されました。初参戦した私(上田悠理)筆者が、現地で医師として、そしてヘルステックに携わる者として感じたことをお伝えしていくべく、皆様にお付き合い頂いております。

さて、今回はトピックに挙げられていた、様々なヘルスケアとテクノロジーに関するキーワードについてご紹介する第2弾。引き続き、上田の独断と偏見でお送り致します!!

今回ご紹介するキーワードは、「CXO」「Population Health」「新しいヒポクラテスの誓い」の3つです。

CTOでもCIOでもない。求ム病院内の“CXO”!!

さて、前回書いた通り、Value-Basedで良いサービスが生まれたとしましょう。けれど、実際に患者さんが使ってくれなければ、病院に導入されなければ、サービスがあっても意味がありません。では、病院内の「誰が」、その革新的で患者さんが使える、Value-basedなサービスの導入を推進するのでしょう?

病院、オペ室の写真
良質なヘルステックのサービスができたら次は病院への導入を適切に推進していく”CXO”が必要となってくる

かかりつけのちょっと大きい病院をイメージして下さい。「誰が」やることになりそうでしょうか?事務長?院長??う~ん、ちょっとイメージつきません…。

会社組織だと、CTO(Chief Technology Officer)、CIO(Chief Innovation Officer)なんて肩書の方がやっていそう。最近だと、CMO(通常はMarketingだけど、ヘルステック業界だとMedicalの場合もある)なんて肩書もありますね。

実は、いま米国では、最先端サービスの導入はCXO(Chief Experience and Innovation Officer)がやっているのです!(熱海殺人事件風に)

User Experienceならぬ“Patient Experience”、つまり、患者体験をいかに向上させるか。そんな役割が病院内にいるというのが日本ではまだ想像できませんが、今後必要となる概念です。米国のMayo Clinic(メイヨー・クリニック)やMt. Sinai(マウントサイナイ病院)などのように、イノベーションを大病院が推進していける環境を、日本にも早く導入していきたいものです。
 
 

Population Healthってなんだ??

次に気になったキーワード。今度は地域に目を向けたものです。

Population Health Managementとは、「ある特定の人口、例えば特定の地域の社会保険受益者などに対し、予防から予後まで長期スパンで慢性疾患のリスクを低減する健康管理の仕組み」(参照元:http://www.hitachi-hri.com/keyword/k105.html)と定義されています。

ある一定の、または特定の人口(=Population)のヘルスケアを考えるから、Population Health。「ある地区に住む糖尿病患者」「30代の女性」など、国民全体の内、「特定のこのグループ」という切り口になるので、公的な健康データとの親和性が高い概念です。リサーチの結果によって、その地域の健康のために環境を変える必要が出るなど、公共性が強くなります。このため、保険会社などだけでなく、アメリカが政府としても主導している概念になります。

星条旗
“Population Health”の概念は、すでにアメリカでは政府主導で取り入れられ始めている

実際に、オバマ政権のCTOだったChopra氏によると、成功例も出てきているとか。

政府が提供するGPSのデータと、喘息患者の吸入器の使用ログとを連携させたところ、特定の地域で、喘息発作による吸入器使用の頻度が上がっていたそうです。そこで、この地域の環境要因(粉塵など)、患者要因(患者教育など)を改善することで、実際に吸入器の使用回数を減らすことができたそうで、長期的には喘息発作による死亡/入院を減らせるということでした。
 
 

新しい「ヒポクラテスの誓い」

もう一つ、Chopra氏のスピーチの中で興味深かったのが、このフレーズです。

「情報の共有を前提とした、新しいヒポクラテスの誓いが必要となる」

医師国家試験に必ず出題される、「ヒポクラテスの誓い」。医学の祖と言われるヒポクラテスが説いたもので、古代ギリシャ時代から今も受け継がれる医師の倫理規範としてあまりにも有名ですが、一方で、パターナリスティックであることも有名です。
※ご存知ない方は、こちらの日本医師会のHPを参照ください:医の倫理の基礎知識「ヒポクラテスと医の倫理」

ヒポクラテスの像
Chopra氏は今後の医療倫理として、新しい”ヒポクラテスの誓い”が必要になってくると主張した。

今までは、医師が情報のすべてを把握していれば事足りました。患者の立場は弱く、庇護される立場でしたから。いつの時代だよ!(いや、古代ギリシャなわけですが・・・)と思いますよね?

ヘルスケア領域のイノベーターや新しい技術の開発者たちは、各々が様々なデータに基づいて製品・サービスを開発しています。ただ、現状、そのデータは他の人に共有することはほとんどありません。(データそのものに価値があるから、仕方ないといえばそうですが・・・)

しかし、Chopra氏は、「データ共有についてのカルチャー・チェンジが必要」と語ります。未発達な領域こそ、数打ちゃ当たる方式に様々なアプローチをとり、成功を目指すのが常道。それこそが「エコシステム」のカギになるそう。そのためにも、データ共有の既存概念を変革する必要があるのかもしれませんね。(この辺りの考え方は、さすがパブリックの人だなぁって感じです)

様々な情報がオンライン上で共有・利用されるようになり、医療関係者と患者の関係も考え直すべきタイミング。それを端的に表した「新ヒポクラテスの誓い」、面白いな~と思ってしまいました。

さて、次回がHIMSSいってみたシリーズは最終回の予定です。まだゆーりコラムの連載を続けさせてもらえるかは、皆さまのシェア&いいねにかかってますよ~!!
次回もお楽しみに~~。

※その他のHIMSS18連載記事はこちら!
【Health 2.0・上田悠理】医療×ITの最先端!HIMSS18に行ってきたーvol.1
【Health 2.0・上田悠理】元GoogleCEOが見る医療ビッグデータビジネス、その先は┃HIMSS18に行ってきた―vol.2
【Health 2.0・上田悠理】ヘルステックの新しいスタンダードは”Value-Based”┃HIMSS18に行ってきた―vol.3
【Health 2.0・上田悠理】サイバー攻撃で命の危険?!医療のIoT化のリスク。┃HIMSS18に行ってきた-vol.5
【Health 2.0・上田悠理】ヘルステック業界は戦国時代!日本のスタートアップは世界で戦えるか?┃HIMSS18に行ってきた-vol.6

上田 悠理Yuuri Ueda

医師/メドピア株式会社 Health 2.0 Asia – Japan 2017統括ディレクター

早稲田大学法学部を卒業後、岡山大学医学部に編入し医師免許を取得。形成外科・訪問診療医として、在宅高齢者の褥瘡管理に携わる。臨床を継続する傍ら、2017年4月よりメドピアが主催するHealth 2.0 Asia – Japan統括ディレクターに就任。臨床現場で感じるニーズと、テクノロジーで可能なこととの間に大きな隔たりを感じており、この壁を破壊するべく、ヘルステック領域のカンファレンスHealth 2.0 Asia – Japanの統括を中心に活動している。
  • b.hatena
  • pocket