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【Health 2.0・上田悠理】ヘルステック業界は戦国時代!日本のスタートアップは世界で戦えるか?┃HIMSS18に行ってきた-vol.6

2018.05.18

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上田悠理
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2018年3月5日~9日の4日間、ラスベガスにて、世界最大のヘルスケアITのカンファレンス「HIMSS18」が開催されました。初参戦した私(上田悠理)筆者が、現地で医師として、そしてヘルステックに携わる者として感じたことをお伝えしていくべく、皆様にお付き合い頂いております。

今回6回目となる“HIMSS18に行ってきた”シリーズもこれで最終回!!前回(【Health 2.0・上田悠理】サイバー攻撃で命の危険?!医療のIoT化のリスク。┃HIMSS18に行ってきた-vol.5)に引き続き、私が登壇したHIMSS内のイベント、Venture Connect(Health 2.0主催)の話題も加えて、今回は「ヘルステックのグローバルマーケット」について考えてみたいと思います。皆様、楽しんで頂けると嬉しいです。

ヘルステック業界はどの国でもまだまだ戦国時代

今回上田がパネリストの一人として参加させて頂いた、Venture Connect内のセッション、「Keys to Investing in the Global Health Tech Market」。インド、中国、ヨーロッパ(フィンランド)、そして日本からきたパネリストが、各々の国におけるヘルステック市場について語りました。

パネルディスカッション自体あまり経験がなく、かなり緊張していた私。正直、自分の登壇したパネルについては、内容のメモを取るどころではありませんでした…。ただ、日本のみではなく、世界共通の課題として感じたことは、ヘルステックの領域は、まだまだインフラすらも構築中であること。

このシリーズでも再三強調しましたが、現在のデータの取り扱いの潮流は「蓄積・解析・提案」の3ステップ。しかし、どの国でも未だに各ステップを行う主導権、そして各ステップを統合する主導権は所在不明です。(もちろん、どれか一つでも取れれば市場の勝ち組ですから、当たり前といえばそうですが…)

そんな中で、国民皆保険を背景に政府主導でデータを収集しよう、という流れになっているフィンランドや日本は特徴的かもしれません。企業が各々連携し、全体のデータソースを作っていくのか、それとも公的機関が一括して連携し、共有していくのか。この辺りは国民性もあるのかもしれませんね。
   
    

日本のヘルステック・スタートアップはグローバルで戦えるか?

もう一つ、これは日本と海外のスタートアップを比べた場合に、とても強く感じたことがあります。それは、日本のスタートアップの多くは、サービス/プロダクト設計がそもそも日本でしか通用しないシステムや制度に準拠しているということ。

これは特に他のアジア圏のスタートアップと比較して感じることですが、彼らは立ち上げから、必ず外国に製品を出すことを念頭に置いてサービス/プロダクト設計を行っています。言語や法制度の如何に関係なくフィットするサービス/プロダクトを作る。つまり、世界中どこでも適応できる「プラットフォーム」を目指した企業が多いとも言えます。

今後、市場がよりグローバル化し、様々なサービスがボーダレスになっていく中、果たして日本のスタートアップは戦い抜けるのか。たしかに言語の壁は分厚いし、日本独特の法律や保険制度などがあるため、グローバルでフィットする設計を作り難い、とも思えます。

けれど、私は、実は日本のスタートアップ・事業会社こそ、グローバルマーケットにフィットしやすいのでは、と思っています。なぜなら、日本人って超★マジメですから!データに裏打ちされた技術と製品に対する愛情・理念は凄まじい。課題はグローバルで戦うマインドセットでしょうか。
   
       

日本でグローバルを見据えたスタートアップは?

それでも、最近はグローバル志向のスタートアップさんが増え始めていて、とても楽しみに感じています。例えば、アルム、Empath、トリプル・ダブリュー・ジャパンなどは、グローバル展開を見据えたサービス展開をしています。

アルムは、Doctor to Doctorの遠隔診療コミュニケーションアプリ「Join」を提供する会社。ソフトウェアとして日本で初めて保険適用されました。昨年の「Health 2.0 Asia – Japan 2017」で代表の坂野さんに登壇して頂きましたが、その後もアメリカやブラジル、ヨーロッパなどでサービスを導入しており、グローバルでのポジションを確立しつつあります。(坂野氏のプレゼン記事はこちら「日本初の保険適用アプリ「Join」の成功秘話。新規参入から4年、薬事承認までの軌跡を振り返る」)

Empathは、音声による気分識別AIを提供する会社。社員の気分を音声から解析し、精神的な健康状態の指標にするなど、健康経営のソリューションとしても有益なシステムです。多数の海外のピッチコンテストに出場しており、先日はTech in Asia SingaporeとICT Spring(ヨーロッパ最大規模のテックカンファレンス)のピッチコンテストでダブル優勝されました。

アルム・坂野氏とEmpath・山崎氏が登壇したHealth2.0セッションの様子
Health 2.0 Asia – Japan 2017でアルム・坂野氏(写真・中央)とEmpath・山崎氏(写真・右)が登壇したセッションの様子。ダイジェスト記事は近日公開予定。

トリプル・ダブリュー・ジャパンは、超音波で排泄のタイミングを予測するウェアラブルデバイス「Dfree」を開発していて、介護現場を中心に展開をしています。社名に「ジャパン」が入っているのは、つまりジャパン以外があるということ。フランスにも会社を立ち上げられており、排泄を予測することでQOLを向上させるという世界初のサービスとして成長されています。(代表・中西氏のインタビュー記事はこちら「世界唯一の排泄予知デバイス「DFree」が生体のあらゆる変化を予測するートリプル・ダブリュー・ジャパン代表 中西敦士氏」)

今後、日本発のヘルステックサービスがグローバルマーケットにどんどん進出していくことを期待していますし、Health 2.0 Asia – Japanがその架け橋になりたいと思っています。(上記3つの会社は、Health 2.0 Asia – Japan 2017にもご登壇頂いており、勝手に鼻高々。アルム坂野さん、Empath山崎さん、トリプル・ダブリュー・ジャパン中西さんありがとうございます!)

さて、今回はHIMSS18参加中に感じた上田の頭の中を大公開!な内容でしたが、楽しんで頂けたでしょうか。「HIMSSに行ってきた」シリーズはこれにて終幕です。お付き合い頂き、ありがとうございました。  
   
そして、今年も統括ディレクターを務めさせていただく「Health 2.0 Asia – Japan 2018」の公式サイトをオープンしました!今後、私が気になる会社さんに突撃したりしちゃうシリーズをここでまた書かせて頂けるかも!?カンファレンスは、“グローバル”の名に違わぬプログラムを作っていますので、皆様12月に渋谷ヒカリエでお会いしましょうね!!

※これまでのHIMSS18連載バックナンバーはこちら!
医療×ITの最先端!HIMSS18に行ってきたーvol.1
元GoogleCEOが見る医療ビッグデータビジネス、その先は┃HIMSS18に行ってきた―vol.2
ヘルステックの新しいスタンダードは”Value-Based”┃HIMSS18に行ってきた―vol.3
今気になる3つのキーワード「CXO」「Population Health」「新しいヒポクラテスの誓い」とは?┃HIMSS18に行ってきた―vol.4
サイバー攻撃で命の危険?!医療のIoT化のリスク。┃HIMSS18に行ってきた-vol.5
   
    


イベント告知

上田悠理が統括ディレクターを務める「Health 2.0 Asia – Japan 2018」が参加申込み受付を開始いたしました。今なら早期割引で参加料がお得です。まずは公式サイトで詳細をチェック!

Health 2.0 Asia – Japan 2018 公式サイト

Health 2.0 Asia – Japan 2018 公式サイトへのリンク

上田 悠理Yuuri Ueda

医師/メドピア株式会社 Health 2.0 Asia – Japan 2017統括ディレクター

早稲田大学法学部を卒業後、岡山大学医学部に編入し医師免許を取得。形成外科・訪問診療医として、在宅高齢者の褥瘡管理に携わる。臨床を継続する傍ら、2017年4月よりメドピアが主催するHealth 2.0 Asia – Japan統括ディレクターに就任。臨床現場で感じるニーズと、テクノロジーで可能なこととの間に大きな隔たりを感じており、この壁を破壊するべく、ヘルステック領域のカンファレンスHealth 2.0 Asia – Japanの統括を中心に活動している。
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