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製薬企業のアセットにテクノロジーを融合。糖尿病問題の克服を目指すMSDのアクセラレーションプログラム

2018.07.09

Text By
オバラミツフミ
Edit By
長谷川リョー
Photos By
横尾涼
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2017年12月5日から6日にかけて渋谷ヒカリエで行われた、世界最大規模かつ最もアクティブなグローバル・カンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2017」。

本記事では、MSD株式会社によって開催されたセッション「Deep Dive:Diabetes Innovation Challenge」をダイジェスト形式でお届けします。

日本における糖尿病の患者数は1,000万人を超えており、今や社会問題といっても過言ではありません。課題の克服を目指すMSDのアクセラレーションプログラムには、食事や行動変容、歯磨きなど、さまざまなアプローチを行う気鋭のベンチャー企業が集まりました。

そのファイナリスト5名が招かれた本セッションは、ヘルスケアの新たなビジネス創出をするきっかけになるのかーー。各企業のプレゼンの様子をお伝えいたします。

※セッション登壇者
・クリス・リージェント氏(MSD株式会社執行役員 プライマリーケアビジネスユニット統括)
・長坂 剛氏(エーテンラボ株式会社 代表取締役CEO )
・岩渕 崇氏(株式会社プライム・ファクターズ 代表取締役)
・小山 昭則氏(歯っぴー株式会社 代表取締役)
・遠山 陽介氏(株式会社ベスプラ 代表取締役)
・鈴木 勝之氏(株式会社Mealthy 代表取締役)
 ■目次


「人々の生命を救い、生活を改善する革新的な製品とサービスを発見し、開発し、提供すること」をミッションに掲げ、医療用医薬品・ワクチンを開発する製薬会社、MSD株式会社。同社は、日本国内において革新的なヘルスケアサービスの創出を目指したスタートアップのアクセラレーションプログラムを行なっています。

MSD株式会社 執行役員 プライマリーケアビジネスユニット統括 クリス・リージェント氏
MSD株式会社 執行役員 プライマリーケアビジネスユニット統括 クリス・リージェント氏

クリス・リージェント(以下、クリス):MSDのクリス・リージェントと申します。弊社は世界140ヶ国以上で事業を展開する製薬会社です。私たちの事業において、一つのコアになっているのが「ビジネスイノベーション」です。日本では、糖尿病領域における医療課題を解決するビジネスプランを募集する「Diabetes Innovation Challenge」を開始しました。

掲げる目標は3つです。1つは、日本における検診率をあげること。2つ目は、2型糖尿病の診断率を高めること。そして最後に、新しいテクノロジー、イノベーションを見つけ、日本での服薬遵守率を上げることです。

本日は、「Diabetes Innovation Challenge」のファイナリスト5名を招き、ご紹介させていただきます。

励まし合いで“三日坊主”を防止する習慣化アプリ「みんチャレ」

エーテンラボ株式会社 代表取締役CEO 長坂剛氏
エーテンラボ株式会社 代表取締役CEO 長坂剛氏

長坂剛(以下、長坂):三日坊主防止アプリ「みんチャレ」を開発しております、エーテンラボの長坂です。私たちは、「ヘルスケアは続かない」という課題の解決を目指しています。たとえば糖尿病治療薬の服薬継続率は、半年後には53%まで低下します。運動治療をされている方も、実行率は50%です。結果として糖尿病患者の数は膨れ上がり、過去30年で、世界では患者数が4倍になっています。医療費は、年間90兆円ともいわれているのです。

こうした現状を受け、ヘルスケアメーカーが行動変容を目的としたアプリを提供していますが、残念ながらほとんど利用されていないのが現状です。そこで私たちは、5人1組のユーザーが励まし合うコミュニティを提供しています。

みんチャレのサービス概要を話す長坂氏

長坂:ユーザーが自分が身に付けたい習慣を選ぶと、5人1組のチームに匿名で参加することができます。「今日はこの行動をしました」と証拠写真を送り合い、励ましあうことで習慣になるのです。「みんチャレ」を利用した習慣化成功率は69%です。ひとりで習慣化できる割合は8%といわれているので、およそ8倍の効果があります。

私たちが「みんチャレ」を提供する理由は、「みんなを幸せにしたい」という思いがあるからです。幸せの定義は多々あれど、ビッグデータ解析による近頃の研究で、「人は自分から積極的に行動を起こすと幸せになる」ことが分>かっています。

まずは第一歩を踏み出してもらい、「続かない」という課題を解決する。そうして、みなさんが健康で幸せに生きられる世界を作りたいと考えています。

シンプルなUIで服薬管理を支援。ロボットがアプローチする薬物療法

株式会社プライム・ファクターズ 代表取締役 岩渕崇氏

岩渕崇(以下、岩渕):プライム・ファクターズの岩渕と申します。本自治お話しさせていただくアイディアは、シャープが開発する二足歩行ロボット携帯電話「RoBoHoN(ロボホン)」を利用した服薬管理システムです。

「Diabetes Innovation Challenge」では、薬物療法のアドヒアランス(医療者の指示に患者がどの程度従うか)の維持・向上が一つの課題に挙げられました。アドヒアランスの年間の遵守率は、およそ3分の1です。原因はいくつかありますが、単純な飲み忘れも一つの要因でしょう。

そうした対応は、薬を飲むことをリマインドすれば解決できます。しかし、現行の服薬管理システムは操作が大変なのではないかと感じています。そこで、音声で操作できるシンプルな服薬管理システムを提供できないかと考えたのです。

事業展望について語る岩淵氏

岩渕:現在交渉中ですが、事業会社様の服薬管理アプリと連携し、服薬のアラートを「RoBoHoN」がしてくれる仕組みを構想しております。服薬のアドヒアランスが向上することはもちろん、医療機関が薬を飲んでいるかをリアルタイムで分かるなどの効果が期待されております。

口腔内の暗黙知を照らすスマート歯ブラシで“歯っぴー”な暮らしを提供する

歯っぴー株式会社 代表取締役 小山昭則氏
歯っぴー株式会社 代表取締役 小山昭則氏

小山昭則(以下、小山):歯っぴー株式会社の小山と申します。私たちは、今後到来する“人生100年時代”をハッピーに過ごせる社会をつくることを目標にし、スマート歯ブラシ「歯っぴ〜」を提供しております。

なぜ歯ブラシなのかというと、歯垢の除去を怠ると、歯周病だけでなく、糖尿病などの生活習慣病や肺炎、鬱病などに発展することが科学的根拠として成立しているからです。

「歯っぴ〜」は既存の電動歯ブラシに光学系の機能を埋め込むことで、目に見えない歯の汚れをスマートフォンに映し出すことができます。歯垢の除去をサポートすることで、糖尿病の予防をはじめとした人々の健康に貢献したいと考えています。

歯周病と糖尿病の関係について語る小山氏

小山:糖尿病を患う7〜8割の患者は、歯周炎にかかっているといわれています。また歯周病を緩和することが、糖尿病の改善に寄与することも近年報告されているのです。糖尿病患者の方には定期的な口腔ケアを行うことが推奨されており、弊社の事業が寄与できることが証明されています。歯科と内科をボーダーレスに行き来することで、健康寿命の延命と医療費抑制に貢献できればと考えています。

「脳にいいアプリ」で糖尿病を予防する。ワーキングメモリーの拡大で健康意識はどう変わる?

株式会社ベスプラ 代表取締役 遠山陽介
株式会社ベスプラ 代表取締役 遠山陽介

遠山陽介(以下、遠山):株式会社ベスプラの遠山と申します。私たちベスプラは、エンジニアだけで構成される会社です。ヘルスケア領域で新規事業を展開していたメンバーが集まっているので、ヘルスケアに強いエンジニア集団になっています。

私たちが構想するのは、運動と食事、脳トレ管理アプリによって認知症と糖尿病を予防するサービスです。すでにアプリはリリースしており、現在のユーザーは25,000人。ヘルスケア領域以外で日頃使われるアプリと同様のユーザーを獲得しています。

展開する「脳にいいアプリ」を利用していただいたユーザーをチェックしたところ、認知機能の向上と脳の過疎化に効果があることが分かりました。

脳トレの提供するソリューションについて語る遠山氏

遠山:我々が持つ認知症予防のソリューションは、糖尿病予防ソリューションに酷似しています。「脳にいいアプリ」の開発で培った知見を生かし、運動や食事を提案することが可能です。

また脳のワーキングメモリーを増やす“脳トレ”によって、予防に対する理解の促進や、行動変容を起こしやすくする効果があるのではないかとも考えています。今後こうした研究開発を行いながら、お医者様と協業し、新たに予防医療サービスを提供できればと思っています。

多忙なビジネスパーソンの食事を管理。パーソナライズされた食生活で糖尿病予防を目指すMealthy

株式会社Mealthy 代表取締役 鈴木勝之氏

鈴木勝之(以下、鈴木):Mealthyの鈴木と申します。私たちは、食事に取り組むことで病気にならない世界を目指しており、食事による健康管理のサービスを開発しております。人それぞれ健康状態が違うので、個人に最適な食事をマッチングすることで、病気を予防したいのです。

健康をつくるにあたり、現在は糖尿病予防にフォーカスしています。糖尿病の一つの原因は肥満であり、肥満は食事による影響が最も大きいといわれています。なので、日常の食事に注意することで、大きな社会課題解決を解決できると考えています。

現在ターゲットにしているのは、多忙なビジネスパーソンの方々です。外食やコンビニなど、食生活が不規則になりがちな方の食事から改善していきます。ユーザーの年齢やプロフィールから、各時間帯ごとにその人が摂取してもいいカロリーの上限値を定め、近隣にあるお店のメニューを提案します。

Mealthyのサービスについて語る鈴木氏

鈴木:私たちの特徴のひとつに、検索者にとって相対的に低カロリーな食事が検索できることがあります。まずは行動のハードルを下げ、その上で栄養士がパーソナルなアドバイスをすることで継続支援をするのです。現状、栄養士に相談したユーザーの約8割が、減量に成功しております。

今は健康経営を目指す企業様を中心にサービス展開をしており、今後は糖尿病が重症化した先の透析を、いかに予防するかに注力していく予定です。各重症度に応じ、薬と食事の提案を同時に提案することができればと思っています。

アクセラレータープログラムの今後についてで締めるクリス氏

クリス:MSDは、糖尿病に関するノウハウや知識をたくさん持っています。そこに新しいイノベーションやテクノロジーを取り入れ、素晴らしいパートナーシップを形成し、糖尿病の患者さんが直面している課題の克服に寄与したいと考えております。

  


イベント告知

本記事のセッションが行われた、世界最大規模のヘルステック・カンファレンス「Health 2.0 Asia – Japan」。開催4回目となる「Health 2.0 Asia – Japan 2018」が12/4,5に開催決定!

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「Health 2.0 Asia – Japan 2018」公式サイト

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