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ビットコインとは異なるスタイルでの社会実装へ。「医療×ブロックチェーン」の世界的パイオニアが明かす、現在地と未来

2018年12月4日から5日にかけてメドピア株式会社主催で開催された、世界最大規模かつ最もアクティブなグローバル・カンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2018」。産学官からヘルスケア業界をリードするトップランナーたちが集い、数十にも及ぶセッションが繰り広げられました。

本記事では、ヘルスケア市場において、ブロックチェーンを活用した分散型ソリューションを提供するイノベーションファーム、Hashed HealthのFounder & CEO、John Bass氏によるKeynote「ブロックチェーンがもたらすEHR/PHR革命」をダイジェストでお届けします。

ビットコインをはじめ、フィンテックを支える分散型テクノロジーとして知名度を上げてきたブロックチェーン。しかしJohn氏は、「解決したい問題によって、活用すべきブロックチェーンの形態は異なる。ヘルスケアにおいては、ビットコインのようなパブリックなスタイルは適さない」と語ります。25年間ヘルスケアに関わり、医療におけるブロックチェーン活用の先鞭をつけたトップランナーによって、現状の課題と今後の展望が明かされました。
 ■目次


ヘルスケア領域における、ブロックチェーン活用のパイオニア

John Bass氏 Founder & CEO, Hashed Health
John Bass氏 Founder & CEO, Hashed Health

John Bass氏(以下、John):ブロックチェーンを活用した分散型ソリューションを提供しているHashed Healthを創設し、CEOを務めているJohn Bassです。テネシー州ナッシュビルに拠点を置いています。これまで25年間ヘルスケア領域に携わってきて、BtoBのヘルスケア系スタートアップを2社立ち上げた後、現職に至ります。

Hashed Healthは2016年、ヘルスケア領域でブロックチェーン活用に取り組む、世界初の会社として創設されました。直近の需要が最も高まっている、企業のインフラとなるようなBtoBプロダクトを開発する傍ら、大企業向けのコンサルティングサービスも行なっています。あわせて世界中のイベントに参加し、ブロックチェーンの技術や必要性に関する啓蒙活動を行い、市場の育成・開拓とコミュニティづくりにも取り組んできました。

ビットコインに使われるパブリック型だけが、「ブロックチェーン」ではない

John Bass氏 Founder & CEO, Hashed Health

John:そもそもブロックチェーンとは、取引やトランザクションを追跡し、ネットワーク上で共有される分散型の「台帳」のことです。共有範囲はパブリックなものもあれば、プライベートなものもあります。

一般的な「ブロックチェーン」という言葉でイメージされるのは、ビットコインなどに利用されている、前者のオープンパブリックなタイプでしょう。しかし解決したい問題によって、活用すべきブロックチェーンの形態は異なります。

たとえば医療情報はセンシティブなものが多いので、ヘルスケア領域でブロックチェーンが活用される場合は、プライベートなネットワークが利用されることが普通です。

しかしブロックチェーンが真の意味でヘルスケアを変革するようになるまでは、まだ少し時間がかかるでしょう。なぜなら、技術面以外の問題が数多く存在しているからです。最新技術を活用したソリューションを社会に届けていくためには、対応した新たなビジネスモデルを組み立てる必要があります。また、ガバナンスのモデルやストラクチャーも最適な形で構築しなければいけません。

ビジネスモデル、ガバナンスモデル、ガバナンスストラクチャー。この3つのバランスを取ることは非常に難しい。我々は既に3年近く取り組んできているにも関わらず、いまだに本当に役立つソリューションを作り上げられていません。ビジネスモデルは今よりも数十倍良いものにしなければいけませんし、ガバナンス面でもさらなる参加を奨励し、ネットワークのメンバー皆が参加できるようなモデルを組み上げる必要があります。

アウトカムベースの契約締結と、資格証明のシーンで社会実装されているブロックチェーン

John Bass氏 Founder & CEO, Hashed Health

John:とはいえ既に、ブロックチェーン技術が社会実装されているケースもあります。たとえば、契約に基づく成果の検証。あらゆる領域で、タスクのボリュームや内容ではなく、アウトカム(成果)ベースで契約を締結するケースが増えてきました。しかし、アウトカムベースの契約は、成果の検証のために非常に大きな事務的負担を要します。そこでブロックチェーンが役に立つのです。ブロックチェーンを活用すれば、信頼性の高い履歴を共有することができます。

医療においても、アウトカムベース、つまり治療成果に基づいた契約が結ばれる有効なケースは少なくありません。たとえば50万ドルの費用がかかる、癌のゲノム治療を想像してみてください。ただ治療を受けることだけに、50万ドルを払いたい患者さんはいません。保険照会、薬剤の有効性と結びつけて判断されるべきです。こうしたケースでは、ブロックチェーンが価値確認のためのコストを著しく下げてくれるのです。

また、ブロックチェーンは保有資格の証明にも使われています。たとえば医師免許の有無を証明するために今までは80日を要していましたが、待機期間は次の行動がとれないがゆえに、1日あたり750ドル相当の損失が発生していました。しかしブロックチェーン技術を活用すれば、遥かに低いコストで認証できます。

まずBtoB領域から社会実装が進む。そして「ブロックチェーン」の定義すら曖昧に

John Bass氏 Founder & CEO, Hashed Health

John:今後のブロックチェーンの動向を見据え、まとめに入りましょう。アメリカでは、小規模なBtoBソリューションから社会実装が進んでいくと言われています。「信頼」の重要性が高い傾向にあるエンタープライズ向けのソリューションについても、活用が進んでいくことでしょう。

ただ、コンシューマー向けのプロダクトにブロックチェーンが実装されるには、まだまだ時間がかかると思います。BtoB領域を中心に、たくさんのブロックチェーン企業が生まれは消え、パートナーシップを結んでいくとともに、新しいタイプのサービスも生まれていくでしょう。またガバナンスののモデルについても、今後さらなる探求が加えられていくはずです。

あらゆる変化が、目白押しに控えています。しかし、混乱を生み出すほどの規模の変化となるには、まだまだ時間がかかるでしょう。失敗するケースも多く出てくるでしょうし、既に社会実装されているモデルを参考にブロックチェーンを適用した結果、失敗に終わることもあると思います。

また分散型だからといって必ずしもブロックチェーンが必要とは限りませんし、今までに想像もしなかったようなタイプのブロックチェーン技術も出てくるかもしれません。「ブロックチェーン」の定義自体が、曖昧になっていくのです。

しかし、技術ソリューションとビジネスモデル、そしてガバナンスを適切にバランスを取ることにより、必ず最適な実装モデルを探り当てられるはずです。スタートアップにとっても、チャンスに溢れていると思っています。

John Bass

Founder & CEO, Hashed Health

John BassはHashed Healthの創設者、CEO。Hashed Healthは、ヘルスケア市場において分散型ソリューションをブロックチェーンによって実現するイノベーションファームである。Johnはヘルスケア業界において、25年もの間、テクノロジーを活用したバリューチェーンの発展を牽引してきた。2015年からヘルスケア市場、特にブロックチェーンの活用に関する執筆、講演に関して国際的なオピニオンリーダーとして活躍している。Hashed Healthでの実績が評価され、Innovator of the Yearに選出。またHashed HealthはBlack BookによりTop Blockchain Developerに選出されている。Hashed以前には、B2Bのヘルスケア系スタートアップであるempactHealth.com(GHXに売却)やInVivoLinkのCEO(HCAに売却)などを歴任している。
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