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南アフリカ発の健康増進型保険“住友生命「Vitality」”は、加入者の未来をどう変える?

2018年12月4日から5日にかけてメドピア株式会社主催で開催された、世界最大規模かつ最もアクティブなグローバル・カンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2018」。産学官からヘルスケア業界をリードするトップランナーたちが集い、数十にも及ぶセッションが繰り広げられました。

今回は、住友生命相互保険会社の高田幸徳氏によって行われた講演「Deep Dive: 健康増進型保険“住友生命「Vitality」” ~ Beyond the Insurance ~」の様子をダイジェストでお届けします。

2018年7月、住友生命は「加入後の健康状態や健康行動によって、保険料が変動する」という新しいタイプの保険“住友生命「Vitality」”を発表。開始から4ヶ月で加入者は12万人を突破し、他の保険会社も住友生命に追随する形で「健康増進型保険」を発表しています。

「現代の保険は『未病』と向き合っていかなければならない」と語る高田氏は、「どうしても非合理な行動をしてしまう」人間の性質を利用した新しい保険のあり方を提唱します。
 ■目次


根本思想は「行動経済学」。人間の非合理的な行動を、プラスに転換させるモデル

住友生命保険相互会社 執行役常務 高田幸徳氏
住友生命保険相互会社 執行役常務 高田幸徳氏

高田幸徳(以下、高田):住友生命保険相互会社の高田です。本日は弊社が2018年7月より販売開始した新しい保険“住友生命「Vitality」”の紹介をさせていただきます。

Vitalityは南アフリカの保険会社・ディスカバリー社が開発し、現在19カ国に890万人もの加入者を抱える「健康増進型」保険です。弊社は2年前よりディスカバリー社と業務提携を開始。日本に合った形で提供できるよう構想し、開発を進めてきました。

それでは、Vitalityがなぜ「健康増進型」と呼ばれるのか説明させていただきます。

従来の保険は加入時の年齢や健康状態によって保険料が決められ、解約するまで一定の金額を支払いつづける必要がありました。しかし、Vitalityは加入者の日々の「健康増進活動」によって保険料が毎年変化します。通常の生命保険に加え「Vitality健康プログラム」として月額864円(税込)を支払う必要がありますが、健康的な行動をすればするほど、保険料を安く抑えることができるのです。

こうした独特なプログラムは、ノーベル経済学賞を受賞した「行動経済学」を応用しています。詳しいプログラムについては後述しますが、月々の保険料を変動させる仕組みも「少しでも損をしたくない。保険料が上がるのは避けたい。」と考える人間の習性を利用したものです。

住友生命「Vitality」

高田:現在11歳の女性は、半数が107歳まで生きると言われており、長寿国と呼ばれる日本人の寿命はいまもなお延び続けています。しかし、介護を必要とせず一人で自立して日常生活を送れる「健康寿命」と「平均寿命」には、大きな乖離がある。来たる「人生100年時代」、健康寿命を伸ばさなければ不健康期間が伸び、医療機関の負担はどんどん大きくなっていきます。

現代人の死因の6割と言われる生活習慣病の主因は、運動不足、不規則な食生活、喫煙、アルコール過剰摂取の4つ。これらは、ほとんどの人が「正しくない」と思いつつも、ついやってしまう行動です。私たちは、そんな「ついやってしまう」人間の性質をプラスに転換し、健康行動に導く試みをしています。

代表的な事例を紹介しましょう。Vitalityでは、加入時点での保険料は、Vitality健康プログラムを付保しない場合と比べて15%割引に設定しています。しかし、日々の健康行動を怠ると、保険料が年に2%ずつ増加してしまう仕組みを構築しました。これは、一度得た利益を失いたくないと感じる「損失回避」の特性を利用し、健康行動を後押ししているものです。

さらに、Vitalityは「長期的な目標よりも、短期的な報酬のほうがコミットできる」という「双曲割引」の考え方を応用したサブプログラム「アクティブチャレンジ」を設けています。これは、1週間ごとに設定された運動目標を達成すると、スターバックスやローソンで利用できる交換チケットをプレゼントするものです。

歩数から心拍数まで。様々な健康行動が「ポイント付与」の対象に

住友生命「Vitality」

高田:「Vitality」が生まれる前の南アフリカは、平均寿命が短く、医者、医療機関の不足が深刻な状態でした。そんな状況のなか、ディスカバリー社は、医療機関が少ないなかで健康状態を改善するための取り組みとして「保険加入によって健康行動を促す」プランを考案したのです。現在では南アフリカの国民のうち、Vitality加入者の寿命が80歳を超えるなどの成果を挙げ、「健康増進型保険」のモデルは全世界に広まっていきました。

ディスカバリー社と住友生命が提携を結び始めたのは2年前で、日本における独占契約を結んでおります。ここからは、弊社が考案した“住友生命「Vitality」”の詳しい仕組みについて説明させていただきます。

弊社が提供する健康増進メニューは大まかに分けて3段階。1つ目は「健康状態を把握する」。2つ目が「健康状態を改善する」。そして3つ目は「リワードを楽しむ」。歩数や心拍数、ジムでの運動など、健康行動をするとポイントが計上され、1年間の累計のポイントによって「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」「ブルー」のいずれかのステータスに判定されます。このステータスによって保険料が変動したり、受け取れるリワードが変化していくのです。

“住友生命「Vitality」”ホームページ「健康増進メニュー」より
“住友生命「Vitality」”ホームページ「健康増進メニュー」より

高田:歩数や心拍数は、ウェアラブル端末やスマートフォンで連携可能。さらに、マラソンやウォーキングの大会へ出場した際も、完走証明書や参加証明書を送っていただくと、それによってポイントが反映されます。また、リワードとしてソフトバンクやアディダスなど、提携を結んでいるのは11社におよびます。

ビッグデータを活用し、「未病」対策に繋がるアクションを

住友生命保険相互会社 執行役常務 高田幸徳氏

高田:最後に、今後の展望についてお話しさせていただきます。

これからは、ビッグデータを活用し、健康プログラムをさらに進化させていきたいと考えています。Vitalityを通じて、購入情報、健康状態、支払いの情報など、膨大なデータが入手可能となりました。立命館大学・産業技術総合研究所と提携し、研究を進めております。さらに今年、弊社は厚生労働省・スポーツ庁が主催する「第7回健康寿命を伸ばそう!アワード(生活習慣病予防分野)」の最優秀賞を受賞しており、各方面からも高い評価をいただいております。

健康から病気へ、連続的に変化している状態を「未病」と呼びますが、生活習慣病が死因の6割を占める現代において、未病期間をどう過ごすかが非常に重要になってきます。弊社は保険会社として未病と向き合い、少しでも健康寿命を伸ばす取り組みをしていきたい。少しでも多くの会社と提携し、健康を増進する運動を進めていこうと考えています。

高田 幸徳Yukinori Takada

住友生命保険相互会社 執行役常務

1988年に京都大学経済学部を卒業し、住友生命保険相互会社に入社。
勤労部門、営業部門にて個人保険販売に関する企画業務に従事。2011年から営業企画部長、2013年から企画部長として「スミセイ中期経営計画」を取りまとめ、計画に掲げた諸目標の達成に尽力する傍ら、他生保との提携、格付の向上、FinTech研究の取りまとめを行う。
現在、CX(Customer Experience)向上とVitality戦略を担当する執行役として、営業職員チャネルの強化やご契約者フォロー体制の強化に取り組むとともに、Vitalityの日本での普及に尽力。