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独自のKPI「いきいき活力指数」で、健康へのより深いコミットを実現。三菱ケミカルHDが構築した健康サポートシステム「i2 Healthcare」とは

2018年12月4日から5日にかけてメドピア株式会社主催で開催された、世界最大規模かつ最もアクティブなグローバル・カンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2018」。産学官からヘルスケア業界をリードするトップランナーたちが集い、数十にも及ぶセッションが繰り広げられました。

今回は、三菱ケミカルホールディングスの「健康医療ICT推進グループ」でグループマネージャー(※)を務める南宏一氏による講演「i2 HealthcareではじめるKAITEKI健康経営」の様子をお届けします。

三菱ケミカルホールディングスでは、2016年4月から健康面で社員の活躍を支援する「KAITEKI健康経営」を推進してきました。そして、それを支えるICT・IoTプラットフォームが健康サポートシステム「i2 Healthcare」。

健康診断の結果や働き方データ、ウェアラブルデバイスを用いた歩数や睡眠データを一元管理するプラットフォームを構築することで、社員の健康行動の促進に寄与してきました。南氏がこのプロジェクトの成功要因として挙げる、緻密に計算された「独自のKPI」とは?

※肩書は2018年12月当時のものです。
 ■目次


社員の活力向上へ、新たに打ち出した「KAITEKI健康経営」とは

三菱ケミカルホールディングス 経営戦略部門 ヘルスケア戦略室 健康医療ICT推進グループ グループマネジャー 南宏一氏
三菱ケミカルホールディングス 経営戦略部門 ヘルスケア戦略室 健康医療ICT推進グループ グループマネジャー 南宏一氏

南宏一(以下、南):三菱ケミカルホールディングスの南宏一と申します。本日は「i2 HealthcareではじめるKAITEKI健康経営」をテーマに、弊社の健康経営への取り組みをご紹介させていただきます。

弊社は「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」を意味する独自のコンセプト「KAITEKI」を打ち出し、世の中の課題に対して、私たちの強みを生かしたソリューションを提供しています。そして、「KAITEKI」を実現する社員を支えるのが「KAITEKI健康経営」です。

昨年12月には、「KAITEKI健康経営」を推進すべく健康サポートシステム「i2 Healthcare」を始動。健康診断の結果や労働環境への満足度、さらにウェアラブルデバイスから取得した歩数や睡眠データを可視化することで、社員一人ひとりの健康維持・改善意識の向上に努めています。データについては後述しますが、社員の創造性、生産性を上げることを目的に、これらのプロジェクトを進めているのです。

また、私たちは社員の健康を表す3つのKPIを独自で発案し、モニタリングしながら健康経営を進めています。その数値が、健診データ、生活習慣の質や日々の満足度を数値化した「健康指数」、労働への意識や行動、取り組みレベルを数値化した「働き方指数」、この2つを統合し、社員の熱意や成長を数値化した「いきいき活力指数」です。健康サーベイ、働き方データ、日々の生活状態…あらゆるデータを統合して課題を見つけ、施策を実行しています。

異なるデータフォーマットをどう統合するか。「i2 Healthcare」実装までの道のりを振り返る

:「i2 Healthcare」を利用する社員は、自分の健康状態を「マイページ」から確認することができます。健康行動の目標設定から、実際の活動量、会社の中でのランキングも閲覧可能。また、運動や食事、睡眠のサポートプログラムに申し込みができたり、ヘルスリテラシーを上げていくためのコラムも読むことができます。

しかし、社員一人ひとりの健康状態を網羅的に見られるサイトを実装するまでには、多くの障壁がありました。まず、社内での合意形成。健康状態は個人情報ですので、セキュリティだけでなく、閲覧権限を設けるなど、社内でどのようにデータを扱うのか、慎重に議論を行いました。

また、7万人の社員がいるグループ企業ですので、それぞれの子会社が異なるデータフォーマットを用いています。さらに、全員がスマホユーザーとも限りません。そのような状況下で、「健診」「働き方」「組織」の情報の統合に、かなりの労力を費やしました。

もう一つ、「i2 Healthcare」を推進する上で重要なファクターが、ウェアラブルデバイスです。私たちはトライアルとして3ヶ月間、300人の社員にリストバンド型のデバイスを装着してもらいました。効果を実感でき、達成感を持てるものとして、Fitbitの「ALTA HR」を採用。現在、1万4000人がデバイスをつけて「i2 Healthcare」を利用しています。

独自のKPIに見られた「プレゼンティーイズム」との相関。社員の健康促進へ、細かい要素分析が強みに

:ここからは、「i2 Healthcare」で用いるデータを紹介していきましょう。先ほど「健康指数」「働き方指数」「いきいき活力指数」の3つの数値を紹介しましたが、これらには明確な関連性があることがわかっています。健康指数、働き方指数が上昇すればするほど、いきいき活力指数は高い数値を示しています。

また、出勤していても体調不良やメンタルヘルス不調により、社員のパフォーマンスが低下している状態を指す「プレゼンティーイズム」と「いきいき活力指数」の関係も判明してきました。社員の生産性向上に向け、プレゼンティーイズムを細かい要素から分析できるのが、我々の強みになるのではないかと感じています。

ウェアラブルデバイスから集めたデータにおいても、3つのKPIとの関連が見られます。歩数ですと、5000、8000、10000、12000…と、1日の歩数が多ければ多いほど、「健康指数」が高くなる傾向が見られています。睡眠時間に関しても、5時間半以上の睡眠を取っている人とそうでない人との間に、「健康指数」の差が見られました。

:2017年12月に始まった「i2 Healthcare」ですが、結果として運動、睡眠、食事、オーラルケア、アルコール、タバコなどの面で、意識や行動が改善していることがわかりました。「i2 Healthcare」を導入し、健康診断、働き方、ウェアラブルデバイスのデータを一元管理することで、社員がより健康を意識できるようになったのではないかと思っています。

私たちは「いきいき活力指数」、「健康指数」、「働き方指数」といった独自のKPIを設けることで、健康面での課題の抽出や、社員のモニタリングを効率的に行ってきました。今後は、健康行動の継続のためのインセンティブや、長期的なデータの分析を行い、より活力高く働ける職場を実現していきたいと思っています。

南 宏一Koichi Minami

三菱ケミカルホールディングス 経営戦略部門 ヘルスケア戦略室 健康医療ICT推進グループ グループマネジャー

三菱ケミカルホールディングス(MCHC)独自の健康経営ICTプラットフォーム i2 Healthcare をプロジェクトリーダーとしてゼロから開発。これまで社内で別々に保管されていた種々データを統合活用することにより価値創出を可能にした。KAITEKI健康経営の基盤として、MCHCグループ主要会社にて展開し活用推進中。
プロジェクトリーダーとして循環器・腎臓・泌尿器系新薬のグローバル臨床開発に従事するなど、ヘルスケア領域における25年以上の豊富な経験を持つ。
京都大学大学院農学研究科修士課程・グロービス経営大学院修了

※肩書・プロフィールは2018年12月当時のものです。